2019 Fiscal Year Annual Research Report
イオン性配位子の光励起による高度に酸化還元された遷移金属触媒の創出
Project/Area Number |
19K21124
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鳥海 尚之 東京工業大学, 理学院, 特任助教 (70827659)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イオン性分子 / 光反応 / 遷移金属触媒 / π共役系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光エネルギーを利用して高活性な遷移金属種を発生させることにより、電荷を持つイオン性のπ共役系配位子を有する金属錯体を合成することを目指した。すなわち、光励起により高度に酸化・還元された金属中心を創出することによって、不活性な結合や分子の化学変換を実現できる新たな光触媒反応を開発することを目標とした。 最終年度である本年度は、高い酸化還元能を有するアクリジン・アクリジニウム分子に注目し、配位子・遷移金属錯体の合成およびその反応性、触媒反応への適用可能性を検討した。実際に、モノホスフィン、またはビスホスフィン部位を有する新規のアクリジンPN二座配位子またはPNP三座配位子(ピンサー配位子)を高い収率で合成することができた。さらに、これらの配位子とパラジウムを始めとするさまざまな遷移金属を組み合わせることで多様な錯体を創製することができた。これらの錯体を用いて種々の反応を検討したところ、独自の光反応性を示すことが明らかになった。特に、ジカチオン性のアクリジンPNPーパラジウム(II)ピンサー錯体は、光照射により犠牲電子供与剤であるアミン存在下でアクリジン部位が1電子還元されたアクリジンラジカルが生じ、パラジウム中心はラジカル性を帯びることが示唆された。またアクリジン二座配位子を用いると、光照射条件下でアリールハライドとカルボン酸とのクロスカップリング反応が収率良く進行することがわかった。今後、さらに触媒反応の検討を行い、不活性結合・分子の活性化を実現したい。
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