2018 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a 1,2-Metallate rearrangement of boracycles: A rapid construction of highly functionalized cyclic- and acyclic-scaffolds
Project/Area Number |
18H05978
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
溝口 玄樹 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (90818519)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | ホウ素アート錯体 / 1,2-メタレート転位 / 立体選択的合成 / 炭素ー炭素結合形成 / 環状ホウ素 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機ホウ素化合物は、現代の有機化学における中間体として欠かせないものであり、またホウ素医薬品など生理活性分子としても期待されている。ホウ素ーC(sp2)結合を持つボロン酸誘導体の合成法が確立されてきている一方、sp3炭素からなり、三次元的に複雑な有機ホウ素分子を立体選択的に構築することは容易ではない。本研究では、ホウ素アート錯体の1,2-メタレート転位を活用した、炭素ー炭素結合形成を伴う有機ホウ素分子の合成法を開発することを目指している。特に、基質の持つ水酸基とホウ素との相互作用を利用した反応制御、ならびに環状ホウ素を基質としたメタレート転位をキーワードとして、高度に官能基化された有機ホウ素化合物の合成を目的とし、研究を開始した。 まず、メタレート転位において水酸基が配向基として機能するかどうかを明らかとするため、ビニルボロン酸エステルに有機リチウムを付加したアート錯体に対し、水酸基を有する求電子剤との反応を検討した。水酸基がホウ素中心に配位することで、通常困難なエポキシドなど炭素求電子剤をトリガーとするメタレート転位が進行することを期待し検討を行なったが、残念ながら反応は進行しなかった。また、水酸基を有するビニルボロン酸エステルを用いた、立体選択性な転位反応を計画していたが、基質となるボロン酸エステルを効率的に調製することができておらず、さらなる検討が必要である。 一方で、炭素求電子剤を用いるメタレート転位を検討する過程で、ベンザインを用いたメタレート転位を見出した。ビニルボロン酸アート錯体に対し、系中で発生させたベンザインを作用させることで、ビニル基のベンザインへの付加、メタレート転位、ベンザインへの付加で生じたアニオンのホウ素エステルへの付加が一挙に進行した。収率の向上のためさらなる検討が必要であるが、多成分を連結しながら有機ホウ素分子が構築できる強力な反応となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の推進にあたっては、メタレート転位における水酸基の配向基としての機能を明らかとすることが必要であった。エポキシアルコールなどでは残念ながら反応の加速効果は見られないことがわかったため、今後は立体選択性の制御に集中することとなった。その基質となる水酸基を配位させたビニルボロン酸エステルの調製においては、ホウ素の置換したシス配置のアリルアルコールを合成する必要がある。末端にホウ素エステルを持つプロパルギルアルコールの還元で合成できることがわかったが、効率という面で課題が残る。このため、環状ホウ素を用いるメタレート転位は次年度に検討することとなった。 一方、本課題を検討する過程で、新規求電子剤を用いるメタレート転位を見いだすことができた。メタレート転位において、炭素求電子剤をトリガーとできれば、一挙に二つの炭素ー炭素結合を形成することができ、複雑な分子を効率的に構築する上で有用である。有機金属やラジカルを用いる例が報告されるようになってきたが、未だ用いることのできる炭素求電子剤には大きな制限がある。本研究では、歪んだ多重結合を持つベンザインが新しいタイプの求電子剤として用いることができることを明らかにできた。ベンザインは求電子剤として付加反応を受けると新たなアニオンを生じるため、多成分を連結しながら有機ホウ素化合物を構築できる点で新規性が高い。予期しない結果ではあるが、メタレート転位を用いる研究課題を進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
水酸基を配向基とするメタレート転位に関しては、基質の合成法の効率化を進めながら、立体選択性に与える影響を検討していく。これと並行して、環内にアルケンを持つ環状ホウ素を合成し、その環縮小型メタレート転位により多置換シクロペンタン環の合成を目指していく。ここでも水酸基を活用することで立体選択性の制御を行う予定である。 また、申請研究の進捗中に見出したベンザインを用いるカップリング反応に関しては、副生成物の生成により収率が十分とは言えない状況である。基質や反応条件の最適化、適応範囲の検討を進め、メタレート転位を伴う多成分連結カップリングとして展開していく予定である。
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