2018 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation of the origin and biosynthesis of tetrodotoxin in terrestrial based on the chemical and metagenome analyses
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18H05997
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
工藤 雄大 東北大学, 農学研究科, 特任助教 (60824662)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | テトロドトキシン / 生合成 / 構造解析 / LC-MS / イモリ |
Outline of Annual Research Achievements |
フグ毒テトロドトキシン (TTX) は、強力な毒性、複雑な分子構造、海洋と陸上の様々な生物に分布する興味深い化合物である。陸上におけるTTXの起源(生産者)は同定されておらず、自然界でどのようにTTXが生産されるか(生合成経路)が長年の謎となっている。本研究では陸上におけるTTXの起源、および生合成経路の解明を目指した。 TTXの起源を探るために、TTXを含有するイモリの生息地から各種生物、環境サンプルを採集した。培養細胞を用いた生理活性試験および質量分析器などを用いた分析法を、有毒生物の探索に適用できるように検討し、微量成分が観測できるように改善した。これまでの探索では毒の検出には至っておらず、サンプリング地の変更、分析法の更なる検討を行いながら探索を継続中である。本分析で情報を集めた後、メタゲノム解析へと移行する。 TTXの生合成経路への知見を得るために、新たなTTX関連化合物を探索した。有毒イモリに含まれる成分を質量分析器を用いて精査したところ、新規TTX関連化合物と推測される成分が2種検出された。それぞれの成分を各種クロマトグラフィーに供し、精製した。精製した2種の化合物の化学構造を核磁気共鳴装置を用いて解析した。いずれの成分も我々が推定しているTTXの生合成経路に矛盾しない化学構造を有する新規TTX関連化合物だと同定された。本研究成果により我々の生合成仮説が支持され、生合成経路への考察を深めることができた。得られた新規成分の内の一つはTTXと化学構造が類似したTTX類縁体であったため、培養細胞を用いた電位依存性ナトリウムイオンチャネル阻害活性試験に供し、TTXの生理活性と比較した。TTX類縁体の構造と生理活性との間の相関(構造活性相関)に新たな知見を与えた。本研究成果は日本農芸化学会2019年度大会で口頭発表し、論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
陸上における神経毒テトロドトキシン(TTX)の起源、および生合成経路の解明を目指し、研究を遂行した。 TTXの起源を探るために、TTXを含有するイモリの生息地から各種生物、環境サンプルを採集した。培養細胞を用いた生理活性試験および質量分析器などを用いた分析法を有毒生物の探索に適用できるように改善した。これまでの探索では毒の検出には至っておらず、サンプリング地の変更、分析法の更なる検討を行いながら探索を継続中であり、この点はやや遅れている。 TTXの生合成経路への知見を得るために、新たなTTX関連化合物を探索した。有毒イモリに含まれる成分を質量分析器を用いて精査したところ、新規TTX関連化合物と推測される成分が2種検出された。それぞれの成分を各種クロマトグラフィーに供し、精製した。精製した2種の化合物の化学構造を核磁気共鳴装置(NMR)を用いて解析した。その結果、いずれの成分も我々が推定しているTTXの生合成経路に矛盾しない化学構造を有する新規TTX関連化合物だと同定された。本研究成果により我々の生合成仮説が支持され、生合成経路への考察を深めることができた。得られた新規成分の内の一つはTTXと化学構造が類似したTTX類縁体であったため、培養細胞を用いた電位依存性ナトリウムイオンチャネル阻害活性試験に供し、TTXの生理活性と比較した。新規成分はTTXよりも低い阻害活性を示すことが明らかになり、TTXの構造活性相関に新たな知見を与えた。本研究成果は日本農芸化学会2019年度大会で口頭発表し、論文投稿中である。 本研究により、TTX関連化合物として新規化合物二種が発見され、生合成経路への知見が深まった。新規成分とTTXなど既知成分の生理活性を比較することで、構造活性相関研究のデータを蓄積できた。化合物の発見に加え、生理活性に関する知見も得られたため、順調に推移したと捉えている。
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Strategy for Future Research Activity |
テトロドトキシン(TTX)の起源を探るために、引き続き有毒イモリ生息地から各種生物、環境サンプルを採集し、各種分析に供す。これまでの探索では毒の検出には至っておらず、サンプリング地の変更、分析法の更なる検討を行いながら探索する。これまで有毒生物が発見できていないのは毒の生産量・存在量が少なすぎることが原因である可能性を考慮し、TTXを高濃度に含有するイモリが生息する地域でサンプリングを重点的に行う。サンプリング地の研究協力者と既に打ち合わせを開始している。分析法についてもより微量な成分も解析可能となるように抽出法・前処理法の最適化を進める。本分析で情報を集めた後、メタゲノム解析へと移行する。これまでの研究成果でTTXの生合成に関与する事が予測される酵素をコードする遺伝子配列を指標することで、メタゲノムの解析結果からTTXの生合成遺伝子クラスターの発見を目指す。 新規TTX関連化合物の探索を継続する。質量分析器を用いた探索(LC-MS/MS)により、これまで得た2種の新規化合物とは異なる新規TTX関連化合物と推測される成分を検出した。本化合物を天然資源より大量に抽出し、活性炭カラム、逆相カラム、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)カラム、陽イオン交換カラムなどを用いて単離する。単離した成分を質量分析器(MS)や核磁気共鳴装置(NMR)を用いて構造を解析する。得られた新規化合物の構造を基に生合成経路への関連を考察し、生合成経路への知見を深める。また可能であれば新規成分を培養細胞を用いた生理活性試験に供し、前年度に引き続き構造活性相関研究を進めていく。
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Research Products
(9 results)