2018 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルス―糸状菌間相互作用に基づく新規生物活性物質の探索
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18H05999
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
二宮 章洋 筑波大学, 生命環境系, 研究員 (50823522)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 糸状菌 / 二次代謝 / マイコウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
環境中の糸状菌は高い割合でウイルスに感染していることが知られているが,これまでの物質探索研究では,ウイルスが糸状菌の二次代謝に与える影響は考慮されてこなかった。本研究は,ウイルスが糸状菌に対して誘導する二次代謝の変化を利用して,新規な二次代謝産物を発見することを目的とする。それぞれ異なるウイルスに感染した3株のイネいもち病菌(Magnaporthe oryzae),およびそれぞれの株由来のウイルス治癒株を用いて,ウイルス感染が二次代謝プロファイルに与える影響を調べた。その結果,用いた3種の培地(ポテトデキストロース培地(PDB),酵母グルコース培地(YG),醤油白砂糖培地(SS))のすべてにおいて二次代謝プロファイルがウイルス感染の有無によって変化する株を見出した。当該株について,ウイルス感染によって生産が抑制される化合物の候補2つ(化合物1および2)と,ウイルス感染によって生産が誘導される化合物の候補1つ(化合物3)を発見した。化合物1はPDAとYG,化合物2と3はSSを用いた場合に生産が確認された。以上の結果から,ウイルスがイネいもち病菌の二次代謝を誘導,あるいは抑制すること,および,ウイルスが二次代謝に与える影響は,培養条件によって変化することが示唆された。本成果は,ウイルスが糸状菌の二次代謝に与える影響を利用し,さらに,培養条件を様々に変化させることによって,糸状菌の潜在的な物質生産能を活性化することができる可能性を示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウイルス感染の有無によって生産量が変化する二次代謝産物を3種発見したため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度発見した,ウイルス感染の有無によって生産量が変化する化合物について,MSおよびNMRスペクトルを基に化学構造を決定し,生物活性を評価する。さらに,化学構造を基に生合成遺伝子を推定する。一方で,新たに得られたAspergillus属糸状菌のウイルス感染株と治癒株のセットを用いて,ウイルス感染の有無が生産量に影響する化合物の探索をおこなう。
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