2019 Fiscal Year Annual Research Report
酵母のBCAAアミノ基転移酵素の細胞内局在性とBCAA生合成機構に関する研究
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19K21144
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
豊川 洋一 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 博士研究員 (80818683)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | Saccharomyces cerevisiae / 分岐鎖アミノ酸 / 分岐鎖アミノ酸アミノ基転移酵素 / BCAA / Bat1 / 発酵生産 / フーゼルアルコール |
Outline of Annual Research Achievements |
酵母Saccharomyces cerevisiae において分岐鎖アミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン; BCAA)は、その生合成経路の最終段階でBCAAアミノ基転移酵素(BCAT)による酵素反応を経て生合成される。またBCAAを中間代謝産物として、バイオ燃料や醸造酒の香気成分として知られるフーゼルアルコールが生産される。これまでに、ミトコンドリア局在性BCATであるBat1に特定のアミノ酸置換が存在する酵母株では細胞内BCAA含量や発酵液中の香気成分量が変化することが見出されている。本研究ではこれらの解析で明らかになったBat1のアミノ酸置換Ala234Asp、Ala296Thrがその機能に与える影響について解析を行った。実験室酵母BY4741Δbat1株を用いて野生型Bat1および変異型Bat1(Bat1A234D, Bat1A296T, Bat1A234D/A296D)を発現させ、表現型を観察した。その結果、野生型Bat1発現株(Bat1)に比べBat1A234D発現株(A234D)およびBat1A234D/A296D発現株(A234D/A296T)ではΔbat1株と同程度の生育遅延が認められた。また、Δbat1株、A234D株およびA234D/A296T株では、Bat1株およびBat1A296T発現株(A296T)に比べ、細胞内バリン含量が低下した。さらに培養上清中のフーゼルアルコール含量はBat1株と比べて、Δbat1株およびA234D株で約4倍、A296T株では約1.2~1.5倍に増加した。各変異型Bat1は細胞内でBat1と同程度の発現量を示したことから、A234Dのアミノ酸置換によりBat1の機能不全が引き起こされると考えられた。また、A296Tのアミノ酸置換はBat1の機能を保持しつつ、フーゼルアルコールの高生産に寄与していることが示唆された。
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