2018 Fiscal Year Annual Research Report
カキ果実のカロテノイド合成に光質が及ぼす影響とそのメカニズム
Project/Area Number |
18H06009
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
渋谷 知暉 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (60818219)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | カキ / 果実 / カロテノイド生合成 / 光応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
カキ果実の着色程度は市場価値に大きく影響する要因の一つであり、着色に影響するカロテノイドの蓄積は気温と光によって影響されることが知られている。加えて、カロテノイド類の多くは体内でビタミンAに変換されることや抗酸化力を持つことから、食品機能性の面でも重要な成分である。本研究では、どの色(波長域)の光がカキ果実におけるカロテノイドの生合成に寄与するのか検討した。2018年度は、カキ‘西条’の成熟期果実に樹上でLED照射を行い、着色やカロテノイド含量に光の色が及ぼす影響について検討した。照射に用いたLEDは、白色(青色光源を蛍光させるタイプ)、青色(ピーク波長:460nm)、赤色(ピーク波長:660nm)であり、対照として自然光を遮った暗黒区を設けた。9月下旬よりLEDの照射を開始し、照射開始後2週間および4週間に果皮の採取とLab値による着色の評価を行った。処理開始後4週間において、赤色の程度を示すa*値が高く最も着色程度が優れたのは赤色LEDを照射した場合で、時点が白色LED、青色LEDと続いた。白色LEDは青色光に加え少ないが赤色光を含むことから、赤色光がカロテノイドの蓄積を促進しているものと考えられた。青色光ついては赤色光ほど顕著な着色促進の効果は認められなかった。赤色光が植物の生理現象に影響する際には、一般にフィトクロムによる受容とシグナリングを介すると考えらており、赤色光と遠赤色光の比率によって影響が変化する。植物葉を透過した自然光は赤/遠赤が低下することから、従来より知られている葉の除去や樹形の改良によって果実に当たる自然光を増やすことでカキ果実の着色を促進できるという現象に一定の説明が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画では、着色程度やカロテノイド含量だけではなくカロテノイド生合成関連遺伝子の発現に及ぼす光の影響を検討する予定であった。しかし、実験期間中の複数回の台風被害によってLED照明の一部が破損し十分なサンプルが確保できず、遺伝子発現解析を実施することができなかった。一方で、カキの着色およびカロテノイド生合成に影響する光の波長について、主要な着色促進とカロテノイド合成促進の効果は赤色光によってもたらされていることを明らかにすることができたため、一定の進捗が得られたと判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従ってカキ果実の主要な色素であるカロテノイドの蓄積に着目してカキの着色に影響する光の影響を評価してきたが、カロテノイド含量だけでなくクロロフィルの減退も着色程度に大きく影響すると考えられる。クロロフィル含量とカロテノイド含量に着目して着色に及ぼす光の影響を評価していく必要がある。加えて、カロテノイド生合成関連遺伝子の発現に及ぼす光の影響についても精査して、どのようなメカニズムで赤色光がカキ果実のカロテノイド合成を促進しているのかを検討する必要がある。
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