2019 Fiscal Year Annual Research Report
林間放牧による森林生態系および流域の水環境への影響―林間放牧と生態系サービス―
Project/Area Number |
19K21151
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
山崎 由理 東京農業大学, 地域環境科学部, 助教 (00826696)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 林間放牧 / 全窒素濃度 / 窒素循環 / 行動調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道様似郡様似町を流下する様似川本川および支川の14地点で,2019年5月~9月までの月1回,採水および流量観測を実施した. まず,様似川最上流の森林流域の河川水中の全窒素濃度は0.16mg/Lと低濃度であり,放牧地内に位置する本川の2地点でも0.15~0.20mg/Lと低濃度を維持していた.一方,放牧地に位置する支川の4地点では,0.14~0.50mg/Lを示し,本川と比較すると窒素濃度の上昇がみられた.支川の採水地点(T-1およびT-2)付近には,冬期間に放牧牛を集めるパドックがあり,家畜糞尿が蓄積しやすいため河川への影響が大きかったと推測される.また,林間放牧の敷地内で一番最下流側に位置する支川のT-4地点では,その他の採水地点では観測されなかったアンモニア態窒素が観測され,林間放牧により河川水質が変化したことが考えられた.このように,放牧地内を流下する支川の窒素濃度は上昇傾向にあるものの,放牧地より下流に位置する本川は0.16~0.31 mg/Lと低濃度であり,林間放牧による様似川本川への影響はそれほど大きくはないことが明らかとなった. つぎに,林間放牧地内に14台のセンサーカメラを設置し,放牧牛の行動を調査した.調査期間は2019年3月23日~2019年11月9日である.牧場の圃場面積は100haで,放牧牛(2019年6月時点で82頭飼養)は圃場内全域を自由に行動できる. センサーカメラの撮影枚数から,4月~6月は放牧牛のほとんどが北側に滞在していた.7月~10月初旬までは,1か月程度の期間で北側と南側に移動を繰り返しており放牧地内を短期間で移動するのではなく,一定期間滞在していることがわかった. 放牧地が開放される4月~10月の間,放牧牛は1か月程度で放牧地間の移動を繰り返していることが,家畜糞尿の過度な蓄積を防ぎ放牧地内での窒素循環を促している可能性が示唆された.
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