2018 Fiscal Year Annual Research Report
Polymorphism analysis of silkworm fibroin H-chain genes for creating a new characteristic silk
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18H06013
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
伊賀 正年 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 研究員 (70721497)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | フィブロインH鎖 / 絹糸性状 / シルク / カイコ |
Outline of Annual Research Achievements |
カイコには絹糸の太さや力学物性に特徴を有する品種が存在するが、これら絹糸性状の差異と品種間の遺伝情報との関連性は分かっていない。そこで、本研究ではナノポアシーケンサーを用いて特徴的な性状を有する蚕品種のフィブロインH鎖遺伝子の塩基配列を決定し、絹糸性状との関連の解明を目指す。本年度は品種間の差異の検討に先立ち、フィブロインH鎖の配列読解に向けた準備ならびに各種検討を実施した。また、遺伝情報との関連性を調べるため、繊度や力学物性に特徴を有する蚕品種の絹糸に関する力学物性等の基礎データを取得した。 ナノポアシーケンサーでのシーケンシングならびに得られたデータの解析に用いるサーバーを構築し、ダイレクトRNAシーケンシングを実施するための環境整備を終えた。また、ゲノムプロジェクトに用いられたp50系統のカイコの後部絹糸腺よりmRNAを抽出し、ダイレクトRNAシーケンシングを実施した。フィブロインL鎖のmRNA配列は問題なく読めたが、目標とするフィブロインH鎖のmRNA全長配列(約16Kb)は読めておらず、4Kb程度の結果であった。したがって、GC含量が高くかつ高反復配列を有するFibHの配列が原因であると考えられ、FibHのmRNA読解に適したライブラリー調製法および解析法の確立が必要であることがわかった。 加えて、塩基配列との関連性の検討に向け、p50系統、高強度系統、細繊度系統、太繊度系統の繭より生糸を繰製し、繊度ならびに力学物性(強度、伸度、ヤング率、タフネス)に関する基礎データを取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はカイコのフィブロインH鎖(FibH)mRNAのダイレクトRNAシーケンシングに向けた準備ならびに各種検討を実施した。具体的には、ナノポアシーケンサーでのシーケンシングならびに得られたデータの解析に用いるサーバーを構築し、ダイレクトRNAシーケンシングを実施するための環境整備を終えた。また、FibHのシーケンシング条件の検討を行うため、ゲノムプロジェクトに用いられたp50系統の終齢幼虫の後部絹糸腺よりmRNAを抽出し、ダイレクトRNAシーケンシングを行った。 シーケンシングにより得られた配列は全てのmRNA配列を含むため、FibH mRNAを抽出するためGenBankに登録されているFibH遺伝子のORFに対してBlastを行い、E-valueが1e-20未満であった配列をFibH遺伝子mRNA配列としてFibHのORFにマッピングした。これまでのところ目標とするFibH全長配列は読めておらず4Kb程度の結果であった。一方、同様の方法で解析したフィブロインL鎖のmRNA配列は問題無く読めていることより、GC含量が高くかつ高反復配列であるFibHの配列に起因すると考えられた。そこで、FibHの繰返し配列における高次構造形成を抑制するライブラリー調製法の検討を進めている。 加えて、塩基配列との関連性の検討に向け、p50系統ならびに高強度系統、細繊度系統、太繊度系統の繭より生糸を調製し、繭糸繊度ならびに力学物性(強度、伸度、ヤング率、タフネス)に関する基礎データを取得した。細繊度系統の平均繭糸繊度が約1.5デニール、P50系統と高強度系統は約2デニール、太繊度系統は約3.8デニールという結果が得られ、繊度に特徴を有する品種における明瞭な差が見られた。また、高強度系統の絹糸はP50系統に比べ30%以上強度に優れていることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度実施したmRNAのダイレクトRNAシーケンシングでは、フィブロインL鎖などの短いmRNAについては問題なく解析出来たが、目的とするフィブロインH鎖(FibH)に関しては5Kb以上の配列を得ることは出来なかった。FibHのmRNAはGC含量が高くかつ高反復配列が存在するため、これが原因であると考えられる。そこで、次年度はFibHのmRNA読解に適したライブラリー調製法および解析法の確立を目指す。また、mRNAのリファレンスとなるFibHのORF配列が品種間で異なる可能性も視野に入れ、品種毎のゲノムDNA解析も並行して行い、リファレンスとなるFibHのORF配列情報を取得する。 得られたFibH遺伝子の塩基配列から予想されるアミノ酸配列と絹糸性状との相関を検討し、現行品種に比べさらに特徴的な力学物性を有する絹糸を産生するカイコの品種育成や、遺伝子組換え技術による新特性シルク産生カイコの作出など、これまでに無い優れた絹糸性状を持つカイコの開発に向けた基盤の構築を目指す。
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