2018 Fiscal Year Annual Research Report
腸管出血性大腸菌に感染する広宿主域ファージの感染機構の解明と食品への応用
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18H06015
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山木 将悟 北海道大学, 水産科学研究院, 助教 (20824337)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 腸管出血性大腸菌 / サルモネラ / バクテリオファージ / 食品衛生 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸管出血性大腸菌やサルモネラによる食中毒は世界的にも重要な問題である。特に,腸管出血性大腸菌による食中毒は重症化することが多く,我が国においても度々事件が発生している。本研究では,これらの食中毒細菌に対してバクテリオファージを用いた微生物制御手法の利用について研究した。本研究で用いるバクテリオファージEscoHU1の宿主域は通常のバクテリオファージと比べて広く,EscoHU1は腸管出血性大腸菌O157:H7やSalmonella entericaの複数の血清型に広く感染した。また,透過型電子顕微鏡観察によりEscoHU1の同定を行った結果,EscoHU1はSiphoviridae科に属するバクテリオファージであることが明らかとなった。また,腸管出血性大腸菌とサルモネラからそれぞれ1株を選出してEscoHU1の感染サイクルについて調べた。EscoHU1の吸着動態について調べた結果,サルモネラに対する吸着速度よりも腸管出血性大腸菌に対する吸着速度の方が早かった。また,一段増殖実験によりEscoHU1の潜伏期,暗黒期,バーストサイズをそれぞれ算出したが,腸管出血性大腸菌とサルモネラに感染する場合で大きな違いはなかった。EscoHU1の殺菌力を液体培地中で評価した結果,EscoHU1処理により腸管出血性大腸菌とサルモネラの生菌数は有意に減少した。さらに,EscoHU1の安全性を確認するため,ゲノムシーケンスを行った。 以上,平成30年度は研究に使用するバクテリオファージEscoHU1の一般性状を明らかにすることに成功し,本ファージが優れた微生物制御剤となる可能性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はバクテリオファージEscoHU1の感染メカニズム解明と食品への応用可能性について評価することを目標としている。平成30年度は使用するバクテリオファージEscoHU1の一般性状を明らかとすることに成功し,感染メカニズム解明と食品への応用評価のための基盤的情報を得ることができた。したがって,進捗状況をおおむね順調と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
使用するバクテリオファージEscoHU1の一般性状については平成30年度の研究により明らかとなった。平成31年度はバクテリオファージEscoHU1の食品での殺菌効果について検討する。食品に腸管出血性大腸菌やサルモネラを接種し,EscoHU1により処理を行う。EscoHU1処理後,接種した細菌の生菌数を測定し,EscoHU1処理がこれらの食中毒細菌を制御するために有効な制御手法となり得るか評価する。さらに,EscoHU1のゲノム塩基配列より,感染に重要なレセプター結合タンパク質を見出し,近縁のバクテリオファージと比較することによりレセプターへの結合に重要な部位を推定する。また,EscoHU1の感染メカニズムについても調べる。これは,EscoHU1とホストの共培養により作出した耐性菌の変異部位調査,ホスト細胞表面のリポ多糖やタンパク質とEscoHU1の結合分析により行う予定である。
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