2019 Fiscal Year Annual Research Report
なぜ油溶性の薬剤は難浸透性のカラマツ材に浸透することができるのか?
Project/Area Number |
19K21159
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Hokkaido Research Organization |
Principal Investigator |
渋井 宏美 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部 林産試験場, 研究職員 (50825932)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カラマツ / 油溶性薬剤 / 浸透メカニズム / 樹脂道 / 壁孔 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は,前年度のカラマツ心材に関する成果を踏まえ,比較のためにカラマツ辺材とスギの心材および辺材を用いた油溶性薬剤と水の浸透性試験を行い,さらに,油溶性薬剤の含有成分の組織内分布の観察を試みた。カラマツの辺材は心材よりも浸透性が高く,心材と同様に早材よりも晩材で浸透性が高いこと,および油溶性薬剤が仮道管,放射柔細胞,放射仮道管,軸方向樹脂道,水平樹脂道の全ての組織内を浸透経路としていることが明らかとなった。特に,心材よりも放射組織によく浸透していたことから,放射組織を介した浸透が,辺材の高い浸透性に寄与することが示唆された。蒸煮処理した辺材は,未蒸煮の辺材よりも高い浸透性を示した。カラマツ心材では蒸煮処理による浸透性の違いが見られなかったことから,心材と辺材では浸透性および蒸煮処理による影響が異なることが示された。スギの心材・辺材は,それぞれカラマツの心材・辺材よりも高い浸透性を示し,カラマツと同様に,心材よりも辺材で,早材よりも晩材で油溶性薬剤の浸透性が高いことが明らかとなった。液体の浸透性と関りが深いと考えられる仮道管間の壁孔閉塞率についても調べたところ,両樹種材ともに心材においては壁孔閉塞率が低い場合に浸透性が高い傾向が見られたが,辺材では壁孔閉塞率に拘わらず高い浸透性を示す傾向にあり,必ずしも浸透性と相関があるわけではなく,壁孔閉塞以外の要素が油溶性薬剤の浸透性に寄与する可能性が示された。油溶性薬剤の含有成分の組織内分布をSEM-EDXを用いて調べたところ,有効成分については成分濃度を限界まで上げても濃度不足のために検出が不可能であったが,標識剤として含まれる亜鉛化合物は検出され,浸透部において含有成分が広く分布することが明らかとなった。
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