2018 Fiscal Year Annual Research Report
高泌乳牛の肝機能障害が炎症性子宮疾患の病態とエンドトキシン代謝に及ぼす影響の解明
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18H06029
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
真方 文絵 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (50635208)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2021-03-31
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Keywords | 獣医学 / 畜産学 / 生殖内分泌学 / 炎症性子宮疾患 / 肝機能障害 / 高泌乳牛 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳牛における繁殖障害の主要因に,子宮への細菌感染によって引き起こされる子宮炎や子宮内膜炎といった炎症性子宮疾患が存在する。本研究では,子宮に感染した細菌が放出するエンドトキシンであるリポポリサッカライド (LPS) 代謝の主たる器官である肝臓に着目し,肝機能障害が炎症性子宮疾患の病態とLPS代謝に及ぼす影響を明らかにする。 平成30年度は,肝機能障害によってLPSが代謝されずに蓄積する可能性について検証するため,炎症性子宮疾患に罹患した乳牛における血中および卵胞液中LPS濃度と肝機能との関連性を解析した。その結果,炎症性子宮疾患罹患牛のうち,肝機能の低下により発生するケトーシスの指標である遊離脂肪酸 (NEFA) 濃度が700 μEq/Lを超えた個体では血中のLPS濃度が分娩後6週まで高値で推移していたことから,肝機能の低下によってLPSが代謝されずに血中に蓄積する可能性を明らかにした。さらに,食肉処理場において子宮の炎症が認められた個体の卵巣を採取して卵胞液の解析を行ったところ,卵胞液中のNEFA濃度が700 μEq/Lを超えた個体では卵胞液中のLPS濃度が高値を示したことから,肝機能の低下が卵胞へのLPS蓄積にも関与する可能性を示した。 つづいて,血中からのLPS消失速度に及ぼす肝機能障害の影響について検証するため,Wistar系ラットを用いて,子宮の炎症と肝機能障害という2つの病態を組み合わせた疾病モデルの構築を試みた。その結果,ラット子宮内へのLPS投与によって卵巣機能の低下を伴う炎症性子宮疾患モデルラットを得た。現在は,超高脂肪飼料の給与による脂肪肝モデルラットの作出に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り,炎症性子宮疾患罹患牛を用いた症例研究を実施し,炎症性子宮疾患と肝機能障害が高い頻度で併発するとともに,肝機能障害によって血中および卵胞液中へのLPS蓄積が生じる可能性を示すことができた。また,子宮の炎症と肝機能障害とを併発する疾病モデルラットの作出においては,子宮内へのLPS投与によって,卵巣機能の低下を伴う炎症性子宮疾患の生体モデルの誘導に成功した。上述の成果から当該年度の計画に沿って概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
肝機能障害モデルラットの作出においては,長期にわたる超高脂肪食給与が必要であるため,絶食などの食餌制限と組み合わせてより効率的に脂肪肝を誘導する手法を構築する。この脂肪肝モデル用いてLPS投与後の血中LPS濃度の推移を健常ラットと比較することで,血中からのLPS消失速度に及ぼす肝機能障害の影響を解析する。また,平成30年度に得られた炎症性子宮疾患モデルラットを用い,黄体形成ホルモンのパルス状分泌および脳視床下部弓状核におけるキスペプチン遺伝子の発現を解析することで,生殖中枢へのLPSの作用におよぼす肝機能障害の影響を検証する。
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Research Products
(7 results)