2019 Fiscal Year Annual Research Report
純血種犬を用いた細菌叢に影響を与える宿主の新規遺伝子の探索
Project/Area Number |
19K21171
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
水上 圭二郎 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (20727721)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細菌叢解析 / イヌ / 加齢性変化 / 腸内細菌 / ゲノムワイド関連解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、純血種犬の細菌叢解析を行い、細菌叢に関する宿主のゲノム領域を同定することを目的とした研究である。 最初に我々は、同一環境下で飼育されている柴犬53頭の直腸便から16S rRNAの可変領域の塩基配列を決定し、一般性質に関する細菌叢の特徴を分析した。その結果、細菌叢の多様性が加齢に伴い変化することを明らかにし、加齢に伴い変化する細菌や細菌群を同定した。これら研究成果は微生物学の国際学術誌(FEMS Microbiol Lett. 2019;366(8))にて発表した。 次に、宿主の遺伝的特徴と細菌叢の関連性を調べた。細菌叢解析と同じイヌのゲノムDNAを抽出し、ゲノムワイドに分布する17万個の一塩基多型(SNP)の遺伝子型を決定した。このSNPデータから算出した個体間の遺伝的距離を腸内細菌叢構造の類似性と比較したところ、有意な相関は認められなかった。次に、個体内の菌種の豊富さや各菌量に関してゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施した。その際、イヌにおいて加齢が細菌叢に影響を及ぼすことが明らかとなったため、年齢を共変量に使用した。菌種の豊富さに関しては有意な関連性を示すSNPは検出されなかった。一方、各菌量に関しては、13個の菌が解析SNP数での多重補正後に有意な関連性を示したが、全解析数での補正後に有意差を示すものは存在しなかった。 同様の解析を口腔細菌叢に対しても実施したところ、腸内細菌叢と同様に解析SNP数での補正後にのみ7個の菌において有意な関連性が認められた。これらのSNPや菌種において腸内細菌叢と口腔細菌叢の間に共通性は認められなかった。 以上より、本研究により、イヌの細菌叢の特徴が明らかとなったと同時に、特定の菌の存在量に影響を与える可能性があるゲノム領域の存在が示唆された。今後、再現実験や機能性研究を行うことによりこれらの関連性の有無をより明確にする必要がある。
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