2018 Fiscal Year Annual Research Report
核ラミナが核膜孔の分布を制御する分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
18H06045
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
志見 剛 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (60817568)
|
Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
Keywords | 核ラミナ / ラミン / 核膜孔複合体 / ヌクレオポリン |
Outline of Annual Research Achievements |
動物細胞では、巨大なゲノムDNAの構造と機能を制御するために、ゲノムDNAが折り畳まれて高次クロマチン構造を取り、核膜によって包み込まれることが必要不可欠である。核膜の内側を裏打ちする核ラミナは、核の大きさ、形、硬さを調節し、凝集したヘテロクロマチンと結合する。核膜を貫通する核膜孔複合体は、核-細胞質間における高分子の輸送を調節し、緩んだユークロマチンと結合する。このように、ラミナと核膜孔の構造を保つことは、ゲノムDNAの構造と転写、複製、修復などの機能を局所的に制御するために必要である。 ラミナの主要な構造タンパク質であるラミンは、タイプV中間径フィラメントタンパク質の一種であり、A型ラミン(LA, LC)とB型ラミン(LB1, LB2)によって構成される。近年、申請者らは、3次元構造化照明顕微鏡法(3D-SIM)とクライオ電子顕微鏡トモグラフィー法(cryo-ET)によって、マウス胎児線維芽細胞(MEF)におけるラミナと核膜孔複合体の微細構造を調べた。その結果、ラミン分子は、4量体を形成し、繋がって直径約3.5ナノメートルのラミンフィラメントを形成すること、ラミンフィラメントが重なり合って厚み約14ナノメートルのラミナを形成すること、これらのラミンフィラメントが不均一に分布することによってラミナが網目構造を取ることを明らかにした。一方、核膜孔複合体は直径約120ナノメートルの筒状構造をとり、約30種類のヌクレオポリンから構成される。核膜孔複合体がラミナの網目構造の穴に1つずつ挿入されている。 本研究の目的は、ラミンフィラメントが核膜孔複合体と結合することによって、核膜孔複合体の分布を制御する分子メカニズムを解明することである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者らの3D-SIMの実験結果によれば、MEFにおいてLA/CまたはLB1が欠損すると、ラミナの網目構造が拡大し、ラミンファイバーに沿って分布する核膜孔複合体が、顕著に減少した。この実験結果から、LA/CとLB1は、ラミナの網目構造の大きさと核膜複合体の分布・数を制御すると考えられる。また、申請者らのcryo-ETの実験結果によれば、ラミンフィラメントが核膜複合体の核質側アウターリング付近に接触していた。核膜孔複合体の核質側で、アウターリングを構成するヌクレオポリンであるElysはLAと、バスケットを構成するTprはLCと結合することが知られている。申請者らの3D-SIMの実験結果によれば、Elysをノックダウンすると、拡大したラミンファイバーの隙間で核膜孔複合体が凝集した。一方、Tprをノックダウンすると、ラミナの網目構造が小さくなり、核膜孔複合体の数が増加した。以上の結果から、LA/CとLB1を含むラミンフィラメントは、Elysを介して核膜孔複合体と接触して機能することが強く示唆される。 現在、この研究成果をラミナと核膜孔複合体の構造的な繋がりに関する論文を執筆中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、ラミナと核膜孔複合体の構造的な繋がりに関する論文を執筆中である。コンピュータービジョンによる3D-SIMの画像の定量的解析が完全には終わっていないので、この解析によって得られた解析結果をこの論文に加えて、来年度中に投稿する予定である。 研究計画調書に記載した通り、申請者らのこれまでの実験結果から、LA/CとLB1を含むラミンフィラメントは、Elysを介して核膜孔複合体と結合すると考えられる。よって、Elysと結合するLA/CとLB1の領域を同定する予定である。FLAGタグ付きの各ラミンの全長、二量体形成に必要な中央のセントラル領域、ポリマー重合に必要なN末端のヘッド領域とC末端のテール領域をそれぞれ強制発現したMEFを使ってFLAG抗体ビーズによる免疫沈降法を行い、Elysと結合する領域をElysの特異的抗体によって検出する。GSTタグ付きの同定した領域をリコンビナント精製してプルダウンアッセイを行い、MEFの溶解液からElysと結合する領域と結合するタンパク質をプロテオーム解析によって網羅的に決定する。
|
Research Products
(6 results)