2018 Fiscal Year Annual Research Report
イネSOG1の機能解析とその発現調節による高効率ジーンターゲッティング系の確立
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18H06060
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
横井 彩子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 主任研究員 (10760019)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | DNA double strand breaks / DSB repair / Sog1 / rice |
Outline of Annual Research Achievements |
シロイヌナズナSOG1(AtSOG1)のアミノ配列情報に基づきイネSOG1遺伝子を探索し、AtSOG1が持つ5つのATMリン酸化サイト(SQモチーフ)をすべて保存している遺伝子(OsSOG1)と部分的に保存している遺伝子(OsSOG1-like)を同定した。これまでに、OsSOG1およびOsSOG1-likeのcDNA過剰発現系統、キメラリプレッサー型過剰発現系統(Sog1CRES-TおよびSog1-like CRES-T)を入手した。また、標的組換え(ジーンターゲッティング, GT)によりOsSOG1およびOsSOG1-like遺伝子のプロモーター下流にGUSレポーター遺伝子をノックインすることで、OsSOG1あるいはOsSOG1-like遺伝子をノックアウトした系統(Psog1-GUS, Psog1-like GUS)を作出してきた。さらにAtSOG1は、DNA損傷のセンサーキナーゼであるATMによるSQモチーフのリン酸化によりその活性が調節されていることから、GTによりOsSOG1あるいはOsSOG1-likeのSQモチーフを不活性型(AQ)に置換した変異系統(sog1 7A, sog1-like 3A)を作出した。OsSOG1およびOsSOG1-likeは機能相補していることも考えられることから、CRISPR/Cas9によりOsSOG1およびOsSOG1-like両遺伝子をノックアウトしたdouble-mutant系統(sog1sog1like)も作出した。現在までに、各種変異系統のT2世代が得られている。 昨年度は、これら種々の変異体を用いて、DNA損傷に対する感受性試験を行い、OsSog1およびOsSOG1-likeがイネにおけるDNA損傷応答、DNA修復経路に関与しているかどうかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OsSog1およびOsSOG1-likeがイネにおけるDNA損傷応答および修復経路に関与しているかどうかを明らかにすることを目的として、野生株(日本晴)、Psog1-GUS, Psog1-like-GUS, Sog1CRES-T, Sog1-like CRES-T, sog1sog1likeの滅菌種子をDNA二重鎖切断(DSBs)を生じさせる薬剤ブレオマイシンを種々の濃度(0, 1, 2.5, 5, 10 цM)で含む培地上に播種し、6日間栽培した後、根の長さを測定した。その結果、高濃度のブレオマイシンを含む培地上でPsog1-GUS, Sog1CRES-T, Sog1-like CRES-T, sog1sog1like変異体の根の伸長が野生株に比べて阻害されることが明らかとなった。しかしながら、Psog1-like変異体の根の伸長は、いずれの濃度の培地上でも野生株と大きな違いは認められなかった。これらの結果から、OsSog1はイネのDNA損傷応答およびDNA修復経路に関与しているが、OsSog1-likeは関与していない可能性が示された。次に、ATMによるリン酸化サイトをGTにより不活性型に置換した変異体(sog1 7A)についても同様に、ブレオマイシン感受性試験を行った。Sog1 7A変異体は、野生株に比べて感受性を示したが、完全に機能を欠損した変異体に比べて弱い感受性を示した。この結果から、Sog1を介したDNA損傷応答および修復経路には、ATMを介した経路の他にもシグナル伝達経路を介していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究において、イネSog1遺伝子がDNA損傷応答および修復経路に関与しており、Sog1-likeは関与していない可能性が示された。そこで今年度は、イネSog1がDNA損傷応答に関与していることを明らかにすることを目的として、DNA損傷を付与する条件下で野生株および種々のSog1変異体においてマイクロアレイあるいはRNA Seqを行い、網羅的に発現解析を行う。その結果から、Sog1の欠損がDNA損傷応答性遺伝子群やその他の遺伝子発現に及ぼす影響を調べる。また、Sog1はDNA修復経路の制御因子として機能していることが考えられることから、OsSOG1の過剰発現あるいはノックアウトにより、人工制限酵素による標的切断頻度や生じる変異パターンの変化を生じるかどうか、また相同組換え活性や標的組換え効率を向上させることができるかをイネカルスにおいて検討する。これまでに所属研究室では、イネにおけるCIRSPR/Cas9を利用した標的変異のシステムは確立されており、またレポーター遺伝子あるいは内在性遺伝子を標的とした相同組換えおよび標的組換え効率の評価系も確立されているため、これらを利用して評価を行う。
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