2018 Fiscal Year Annual Research Report
腸前駆細胞直接誘導法を利用したヒト成体型腸上皮オルガノイドの作製
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18H06069
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
三浦 静 九州大学, 生体防御医学研究所, 特任助教 (80822494)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | ダイレクトリプログラミング / 腸幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、ヒト臍帯静脈内皮細胞にHNF4A、FOXA3、GATA6、CDX2の4つの転写因子を導入し、ヒト腸前駆細胞の誘導に成功している。マウスにおいてはin vitroで誘導腸前駆細胞を誘導腸幹細胞へと成長させることが可能であったが、ヒト誘導腸前駆細胞はマウスと同じ条件で培養しても誘導腸幹細胞へと成長しなかった。ヒトの腸前駆細胞を採取してヒトの腸の発生過程を調べることは、倫理的にも大変難しいため、ヒト誘導腸前駆細胞を腸幹細胞へと成長させる方法が確立できれば、腸の発生に関する研究にも利用可能であると考えられる。そこで、まず、マウス腸前駆細胞から腸幹細胞へと誘導した際に行ったマイクロアレイデータをもとに、腸幹細胞への誘導に必要と考えられる遺伝子の絞り込みを行った。その際、まず、転写因子に着目し候補遺伝子を抽出した。つづいて、得られた候補遺伝子を導入する方法の確立を行った。ヒト誘導腸前駆細胞は、三次元培養をしていることや、組織構築をしているという点で遺伝子導入が困難であったため、様々な文献をもとに遺伝子導入方法を検討し、安定して遺伝子を導入できるようになった。そこで次に、候補遺伝子を搭載したベクターを改良した遺伝子導入法で導入し、腸幹細胞への成長に向けて検討を行っている。遺伝子の探索だけではなく、培養条件についても改良を行っており、腸の発生過程に必要と考えられるサイトカインの添加、および、これまでの培地条件の見直しを進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト臍帯静脈内皮細胞に4つの転写因子を導入して作製した腸前駆細胞を腸幹細胞へと成長させるために、幹細胞への成長に必要であると考えられるいくつかの候補遺伝子の導入を検討した。その際、腸前駆細胞はマトリゲル中で培養していること、オルガノイドを形成していることから、遺伝子導入が困難であると考えられた。そこでまず、いくつかの文献の情報をもとに、条件検討を行い、遺伝子導入方法の改良を試みた。その結果、約60%程度の細胞に遺伝子導入が可能である方法を確立できた。つづいて、候補遺伝子を導入すべく、遺伝子を搭載したベクターの作製を行った。現在、このベクターを細胞に導入し、腸幹細胞へ成長するか否か検討を行っている。さらに、遺伝子だけではなく、培地の条件によって成長が促進される可能性を考え、培地条件の見直しおよび改良を行っている。これまで必要と考えていたサイトカインや低分子化合物の中に成長を阻害するものが入っていないかということや、足りなかったシグナルがあるかどうかを探索している。特に、生体のヒト腸幹細胞培養法やヒトの腸の発生過程に必要なシグナルを中心に様々なサイトカインを添加し、条件検討を行っている。サイトカインの添加においては、添加する濃度、および添加するタイミングが重要になる可能性があり、多くの条件で検討を行っている。また、サイトカインの添加については腸の発生の研究など、これまでの文献も多く参考にし、探索を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き候補遺伝子の導入を行うとともに、培養条件の検討を行う。また、生体内の環境が腸幹細胞への成長に必要な場合を考え、マウスの腸の間質の細胞およびヒトの腸の間質の細胞(市販の細胞)と共培養する。その際、腸前駆細胞を間質の細胞を混合し凝集塊の作製を試みる。実際に、マウスの腸の発生過程において間質の細胞が絨毛様構造の形成に関与していることが分かっている。凝集塊を作製し直接的に細胞からシグナルを受け取れるようにすることで、生体内と同様の環境を作ることができると考えられる。上記方法を用いても腸幹細胞へ成長しなかった場合は、作製した凝集塊を免疫不全マウスの腎被膜下へ移植し、生体内で成長させる。in vitroでは in vivoと同様の環境にすることは大変難しい可能性があるため、生体内で直接シグナルを受け取れるようにする。移植する細胞はGFPでマーキングしておき、移植後に生着が確認できた場合に、生着した細胞をFACSを用いて単離し、単離した細胞を三次元培養下で培養する。その後、単離した細胞が腸幹細胞へと成長するか否かを絨毛様構造を形成するかで判断する。また、単離した細胞はRNA sequenceによって網羅的遺伝子発現パターンの解析を行い、公共データの生体内のヒト成体腸上皮細胞と同じ遺伝子発現パターンを示すか否かを調べる。遺伝子発現パターンが同様であった場合は、ヒト誘導腸前駆細胞の遺伝子発現パターンと比較解析を行い、どのような遺伝子が特に変化しているかを解析し、その遺伝子をヒト誘導腸前駆細胞に導入することで、in vitroでもヒト誘導腸幹細胞へ成長が可能かをもう一度検討する。
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