2018 Fiscal Year Annual Research Report
Foraminiferal elemental composition and calcification process
Project/Area Number |
18H06074
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
長井 裕季子 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 協力研究員 (20822612)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / バイオミネラリゼーション / 有孔虫 / FIB(集束イオンビーム) / カルサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
石灰質有孔虫殻の微量元素組成・同位体がなぜ種によって異なるのかまだわかっていないが、プロキシーの信頼性向上の為にも細胞レベルでの元素の取り込みプロセスを理解する必要性がある。先行研究において石灰化時に殻形成部位と外界を隔絶する有機膜の存在が明らかになり、その有機膜の「水密性」が元素の取り込みに関与しているという仮説を立てた。本研究では有孔虫の殻形成プロセス解明のために殻形成中の試料を固定し、殻形成部位を覆う有機膜構造の違い、すなわち外界との「水密性」を殻のMg含有率の異なる3種の有孔虫で比較することを目的としている。 本年度は研究対象としているMg含有率の異なる3種類の有孔虫(Cibicides属、Rosalina属、Planoglabratella属)を岩礁地から採取し、単離した。単離した有孔虫を飼育し、まずは殻形成を誘導する条件を検討した。Rosalina属では餌の与え方を工夫することで石灰化誘導させられることがわかった。Planoglabratella属では細胞内に盗葉緑体を保持している為、明暗サイクルの暗条件下において石灰化を開始することが多い事がわかった。Cibicides属においてはまだ石灰化誘導には至っていない状況である。 石灰化誘導に成功した2属においては殻形成の全過程を把握する為に殻形成が始まるとその様子を倒立顕微鏡を用い詳細なタイムラプス観察を行った。また一部の試料を走査型電子顕微鏡観察用に生物固定行い、まとまった数が揃い次第順次、臨界点乾燥法を用い処理を行った。 本年度はエジンバラで開催された国際有孔虫会議でポスター発表を行った。欧州地球科学連合の学会誌BiogeoscienceにAmmonia属における全殻形成過程の詳細なタイムラプス観察と走査型電子顕微鏡による殻形成部位を囲む有機膜構造の形成と炭酸カルシウムの沈着の様子をまとめた論文が掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象としているMg含有率の異なる有孔虫Cibicides属(Mg/Ca比で約5mmol/mol)とRosalina属(同20mmol/mol)、Planoglabratella属(同100mmol/mol)を岩礁地から採取し、有孔虫を単離した。単離した有孔虫をシャーレ内で飼育し、石灰化誘導条件を探索している。Biogeoscienceに報告したAmmonia属においては給餌するタイミングを工夫することで、複数個体をほぼ同時に石灰化誘導させることに成功している。Rosalina属においてはAmmonia属と同様の方法で、石灰化誘導を行えることがわかった。細胞内に盗葉緑体を保持しているPlanoglabratella属においては明暗サイクルの暗条件下で石灰化を開始することがわかった。Cibicides属においてはまだ誘導条件は定まっておらず、また石灰化の観察例も限定的である。その為、多くの個体を採取し誘導条件を探っている段階である。 石灰化誘導を行い、殻形成が始まった個体が得られた後、全殻形成過程を把握するために、倒立顕微鏡を用いてタイムラプス観察を行っている。形成する殻の大きさにもよるが、殻形成にかかる時間はRosalina属では8時間程度、Planoglabratella属では24時間程度と属により大きく異なることがわかった。Rosalina属では殻形成の初期において新しく作られる殻の形に細胞質が露出し、その表面に炭酸カルシウムが沈着する様子が見られ、細胞質によって殻の形を決めているように見える。しかしPlanoglabratella属では、殻がしっかりと形成され、最終段階で細胞質が移動するなどの違いが観察された。 また殻形成中の個体を一部生物固定し、走査型電子顕微鏡観察(SEM)用の処理を順次行っている。処理を行った一部試料はSEM観察を行い、有機膜の構造観察に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.石灰化誘導条件の検討と殻形成試料の処理 今後は対象としている有孔虫をさらに飼育個体を増やし、石灰化中観察事例と観察個体数を増やす。具体的には現在石灰化誘導において順調なRosalina属及びPlanoglabratella属においては本年度最適化された条件下で飼育を行う。個体数を増やし、得られた石灰化誘導条件下で飼育し殻形成中の個体を多く得る。石灰化誘導条件がまだ見出せていないCibicides属においては、個体数を増やし条件を振って検討を行う。Cibicides属において石灰化誘導が難しいようであれば、同じくMg/Ca含有率の低いElphidium属に切り替えて実験を行うことを視野にいれている。Elphidium属においては石灰化誘導条件が定まりつつあり、付着性の小型珪藻を餌として密度濃く与えかつ明暗サイクルの暗条件下において石灰化が誘導されるという知見が得られつつある。引き続き殻形成の全体像把握のための詳細なタイムラプス観察を行う。合わせて殻形成中の個体はSEM観察用に生物固定する。 2.走査型電子顕微鏡観察 生物固定した殻形成中の試料に対し臨界点乾燥法を用いて電子顕微鏡観察用の試料処理を行う。処理後の試料はSEMを用いて殻形成部位の有機膜構造を観察し、Mg含有率の違う属ごとに、膜構造の水密性に違いがあるかを比較検討する。さらにSEM試料室内で集束イオンビーム(FIB)を使用し微細加工を施し、殻の横断面を得て殻形成部位の有機膜構造と沈着した炭酸カルシウム結晶の関係性を観察し、比較検討を行う。また得られた殻の横断面に対してEDSによる元素マッピングを行う予定である。本年度は特に走査型電子顕微鏡を使用した観察事例の蓄積に力を入れる。
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[Presentation] Foraminiferal ultrastructure: a perspective from fluorescent and fluorogenic probes2018
Author(s)
Fabrizio Frontalini, Maria Teresa Losada, Takashi Toyofuku, Jaroslaw Tyszka, Jan Golen, Lennart de Nooijer, Barbara Canonico, Erica Cesarini, Yukiko Nagai, Tetsuro Ikuta, Remi Tsubaki, Stefano Papa, Rodolfo Coccioni, Jelle Bijma and Joan M. Bernhard
Organizer
International Symposium on Foraminifera (FORAMS 2018)
Int'l Joint Research
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