2018 Fiscal Year Annual Research Report
コケ食相互作用の多様性:食痕に基づく植食者群集の時代間比較
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18H06077
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
今田 弓女 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 助教 (80818948)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 生物間相互作用 / 古生態学 / 植食性昆虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物とそれを食べる節足動物は、現在の陸上生態系において豊富な生物間相互作用であり、生食連鎖網において重要な役割を担っている。多くの植物は有毒な化学物質をもつことで食害を回避するが、一部の節足動物は植物の防衛への対抗策を獲得し、植物食を進化させてきた。 コケ食者は被子植物食者に比べれば少ないものの、その多様性は大いに過小評価されていることが近年の調査から明らかになってきた。コケ食の節足動物の多くが微小で目立たず、地域固有性が高く、短期間にのみ出現するためである。私は国内外の野外調査でコケと相互作用する昆虫の多様性とその生活史を解明してきた。本研究は、現生のコケおよびそれらの植物と相互作用する節足動物の相互作用について、生物学および古生物学の両方からアプローチする。現生種のコケ上における植物食者の調査から、その特異な群集の特性を明らかにすることがねらいである。 本年度は、これまでの国内での研究ではほとんど明らかになっていなかったシリブトガガンボ類の生態・幼虫形態について明らかにした。日本国内および北米における野外調査の実施により、いくつかの双翅目昆虫と特定分類群のコケとの相互作用を新たに発見した。 一方、コケ化石の豊富なバンクーバー産鉱化植物化石の標本調査を実施した。その結果、複数種のコケ化石において食痕と解釈できる生痕が発見された。それに加えて、同時代の化石から裸子植物の特殊な根構造および菌との共生関係を新たに発見した。この発見は植物における菌根共生系の理解において重要な知見をもたらしうる。そのため、研究計画の一部を拡張し、現生の植物の類似する根粒構造との形態比較を以上の研究と並行して進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度から野外での定期調査の実施を予定していたが、新勤務地における研究環境の整備のため調査の実施は予定よりもやや遅れが生じた。しかし一方で、北米大陸においてこれまで知られていないコケと昆虫の相互作用を発見することができた。また、アメリカで現在進めている化石標本調査において植物の菌根共生系に関わる興味深い発見があったため、研究内容を拡張して進めている。これらの点では、予定していた研究とは異なる方向性において大きな進展があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は国内での定期的サンプリングを実施し、研究計画の通りに遂行する。また、メキシコでの化石発掘調査、アメリカでの博物館および大学における化石標本調査の実施を予定している。
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Research Products
(6 results)