2021 Fiscal Year Annual Research Report
微生物食者の食物年齢から土壌食物網の生態系機能を解き明かす
Project/Area Number |
19K21201
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
藤井 佐織 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (50648045)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 土壌動物 / トビムシ / 放射性炭素同位体 / 根 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、物質循環の主たるプロセスである有機物分解を担っていると考えられているにもかかわらず、各分類群の食性が依然分からないために生態系機能がブラックボックスとして扱われたままである土壌動物に対して、放射性炭素同位体を用いた食物年齢の特定による利用炭素源の理解からその機能を明らかにしていこうというものである。初期の予定では、オランダ人共同研究者らと協同して算出した放射性炭素同位体比と形態形質の相関関係について解析をすすめる予定であった。しかし、コロナ禍のためオランダへの渡航が許可されなかったため、放射性炭素同位体比のみのデータから解釈を進め、下記内容を学会で発表し、かつ国際誌に論文として発表した。 主要な微生物食者であるトビムシのほとんどの種は、従来から食性解析に用いられてきた炭素・窒素安定同位体比(δ13C・δ15N)の値に関わらず、枯死有機物よりも低い14C濃度(Δ14C)を示した。これは、トビムシが、餌の種類に関わらず枯死有機物よりも新しい炭素(光合成されてから間もない炭素)からできた餌を利用していることを示す。また、表層よりも深い腐植層に住む土壌性種はδ15Nが高くなるほど新しい炭素への依存度が大きい傾向を示した。これまでδ15Nが高い理由は、微生物による分解が進んだ有機物を食べたか、あるいは菌根菌を食べたためのどちらか判別できなかったが、14C分析の結果を踏まえると、その理由は後者であると推察された。これにより、トビムシの枯死有機物への依存が小さいことを示す強固な証拠を得ることができた。また、クモやムカデなどの捕食者は、概してトビムシよりも古い炭素年齢を示しましたが、枯死有機物よりは新しい場合が多く、トビムシの食性が土壌食物網全体に強く影響していることが伺えた。
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