2018 Fiscal Year Annual Research Report
房総半島南部における最終氷期末期以降の照葉樹林の分布拡大に黒潮が与えた影響
Project/Area Number |
18H06079
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
西内 李佳 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (70828805)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 完新世 / 房総半島 / 花粉分析 / ボーリングコア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、最終氷期末期以降(約1万年前以降)の地層に含まれる植物化石(主に花粉化石)に基づいて,照葉樹林の成り立ちに黒潮が与えた影響を明らかにすることを目的として行われた.平成30年度は,房総半島南部の外洋側である千葉県南房総市の丸山川低地を対象として,野外調査および試料の採取,室内作業を行った. 約1万年前以降の,植物化石をよく含む有機質な堆積物を採取するために,丸山川低地とその周辺の既存のボーリングコア試料の調査と現地調査を行った(2018年11~12月).本研究の背景となり,本研究と同様の研究手法である,気温だけでない条件に着目して明らかにした最終氷期の日本列島の古植生について,日本植生史学会で発表を行った(同年11月).試料採取地点として2地点(丸本郷地区,西原地区)を選定し,機械式ボーリングによる堆積物コア試料の採取を行った(2019年1月).採取したボーリングコア5本(合計31m)について,写真撮影・観察・記載,試料処理を行った(同年2月~3月).丸本郷地区で採取した堆積物は,層相や周囲の地形から河成段丘堆積物であると推定された.西原地区では,段丘に囲まれた狭い谷の中に厚さ14 mの草本質泥炭層が堆積しており,長期間に渡って湿地環境が保たれていたことが明らかになった.既に採取済みである房総半島南部の東京湾側の館山平野のコア試料は海成層であるため,様々な堆積環境の試料を分析することによって,植生の空間的な分布の推定に繋げることができる. 現在は,館山平野と丸山川低地のコア試料の実験・分析を進めると共に,成果の公表の準備を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験設備などの研究環境の整備に予想以上に時間がかかってしまい,採取済の館山平野のコア試料の分析が遅れている.例えば,使用薬品のうち特に危険な薬品に耐えうるドラフトチャンバーが故障しており,修理も認められない状況であったため,他部署のドラフトチャンバーを使用する調整を行うなどして対応した.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,館山平野1地点と丸山川低地2地点の計3地点のコア試料の植物化石分析(主に花粉分析)を進め,堆積環境と周囲の地形を考慮し,それぞれの地点周辺での照葉樹林を含む植生の空間的な分布とその変遷を明らかにする.この結果と,気候や黒潮の変動を比較し,植生変遷との関係について考察する.
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