2018 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18H06086
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 亮 京都大学, 医学研究科, 助教 (70817931)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 意思決定 / マカクサル / 前頭前野 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、高リスク高リターンvs低リスク低リターン課題(HH-LL課題)を用いて、サルのリスク選択に対する行動評価方法を開発準備してきた。サルが、注視点を固視すると左右に異なる報酬確率及び期待値を意味する2つのドットが提示され、どちらかに目を向けると、その報酬確率、期待値で水を得ることが出来る。このような状況下において、一頭目のサルでは、出来るだけ期待値が高く、高リスク・高リターンを好む傾向が観察されている。また、興味深いことに、期待が低いほど、リスクを取りがちになるという結果を得ている。本結果は、色のassignmentには影響されていないことも確認できている。また、予備実験としてGABAAレセプターのアゴニストであるムシモルを各脳領域に注入し、神経活動の抑制が、サルの行動に、どの様に影響を及ぼすかを検討した。特に注目すべき結果として、大脳皮質腹外側前頭前野(ventrolateral prefrontal cortex:VLPFC)へのムシモル注入により、HH-LLのバランスが消失する傾向が示された。さらに、複数の脳領野へ同時アクセス可能な、実験システムの構築に成功している。そして、次年度目標としている、多ニューロン同時記録をプレクソン製16チャネルのプローブ電極を左右の腹外側前頭前野に挿入し、課題遂行中のサルから予備実験を行った。現在、解析途中である。1頭目のサルで得られた興味深いデータの正当性を得るために、現在、2頭目のサルのトレーニングを開始している。1頭目と同様の傾向がすでに見え始めており、申請者の仮説を支持する予備結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的としていた、サルにローリスク・ローリターンとハイリスク・ハイリターンのどちらかを選択する課題(以降、HH-LL課題)を訓練し、どれだけリスクを取るかを検討できた。このように、相反する複数の情報が、どのように統合されるのか、また、そのバランスがどのように切り替わるかを定量化できる評価方法をほぼ確立できている。さらに、その選択が、どの程度、期待される報酬量に依存するかも検討できた。さらには、次年度の目標としていた、多ニューロン同時記録実験システムの構築にも成功している。したがって、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
腹側被蓋野や側坐核、扁桃体などの部位のドーパミン細胞をはじめとする多種、多数のニューロン活動の同時記録を行い、その活動から課題遂行中のサルの意思決定の状態をオンラインで推定する。そこでは、申請者が、これまでテーマとしていた、知覚的意思決定に関する研究において構築してきた、信号検出理論やデコーディング解析を用いたニューロン活動からの行動推定法を導入し発展させる(Sasaki & Uka, Neuron 2009; Sasaki et al., J. Neurosci. 2017)。数年を見据えた、本プロジェクトの一連の展望として、臨床応用への発展と、薬理・遺伝学的操作を用いた神経回路機構の解明へと発展させたい。具体的には、精神疾患患者の治療法の開発へと発展させる。例えば、複数脳領野の神経活動から本人の意思決定のモードをデコードし、患者本人に客観的にフィードバックして自身に修正させることが可能になれば、ギャンブル依存に対する新しい認知行動療法が開発できると期待される。
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