2018 Fiscal Year Annual Research Report
医薬リード分子の網羅的創出を指向した酵素模倣型カルボン酸変換反応の開発
Project/Area Number |
18H06097
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小島 正寛 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (90824714)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 光反応 / 金属触媒反応 / 医薬化学 / late-stage官能基化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究提案では自然界に豊富に存在するカルボン酸を原料とし、より化学変換しやすく有機合成化学における有用な合成中間体となるアルケンへと変換する反応の開発を中心的な目標として設定している。本反応を実現するために光触媒とコバルト触媒の協働触媒系を用い、可視光照射下という穏和な条件で、脱炭酸と脱水素を一挙に進行させる触媒反応の実現を目指した。本反応が実現すれば、医薬品に含まれるカルボキシル基のlate-stage変換を通じた、新たな医薬リード分子の効率的な創出が可能になると期待される。 初年度は本研究提案で目標とする反応を実現するため、まず光酸化還元触媒およびコバロキシム誘導体の網羅的な合成を行った。次にこれらの触媒の組み合わせの検討を通じ、モデル基質たるカルボン酸にて良好な収率で目標とするアルケンへの変換を実現する触媒系を見出すことに成功した。なおアルケン合成に関してはRitterらのグループにより競合する研究成果が発表されたため、光触媒とコバルト触媒の協働触媒という基本コンセプトを維持しつつ、他の触媒反応系への適用も並行して検討した。その結果、当初のカルボン酸のアルケンへの変換に加え、還元剤を用いる条件にて発生させたコバルトヒドリド中間体を用いたアルケンの新規変換反応、および光触媒条件にて発生させた低原子価コバルトを用いたアリル位置換反応へと展開することに成功した。こうした初年度の成果は光触媒とコバルト触媒の協働触媒系が多様な触媒反応に適応できることを証明した点で意義深く、未だ黎明期にあるmetallaphotoredox catalysis分野に新たな発展の可能性を示すものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初目的としていたカルボン酸のアルケンへの直接的触媒反応に関しては、世界的に複数グループが競合する、極めて魅力的な研究対象であることが明らかとなった。この状況を踏まえて研究の方向性の再検討を行った結果、申請者の薬学というバックグラウンドを活かしたlate-stage官能基化による新規医薬候補化合物の創出という、より明確な目的を有するプロジェクトへと研究計画を修正した。これにより競争の激しいカルボン酸の脱炭酸反応の中でも、申請者のアプローチの独自性が明確になった。 また光触媒とコバルト触媒の協働触媒系を用いた他の新反応開発研究では想像していた以上の成果が得られた。1年という期間の中で複数の新規反応の発見に成功し、このうちアリル位アルキル化反応に関しては論文発表も行った。以上を踏まえ当初計画以上の進展と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で確立した複雑カルボン酸の変換により得られたアルケン誘導体を中間体とし、多様なアルケン誘導体化手法の適応を通じて新規医薬品誘導体ライブラリーの創出を目指す。また光触媒とコバルト触媒の協働触媒系を用いた新規反応系に関しては、系中発生させたコバルトヒドリドを用いる反応では広汎かつ一般性の高いアルケン官能基化反応に、低原子価コバルトを用いたアリル位置換反応に関しては更なる適応反応系の拡張に大きな発展の可能性があると考えられる。先行研究の調査を通じつつ、これまで実現不可能だったコバルト触媒反応の実現へと展開する予定である。
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Research Products
(11 results)