2018 Fiscal Year Annual Research Report
神経変性疾患に関わるPDIのSNO化位置の同定と神経変性機構との関連
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18H06099
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小倉 次郎 東北大学, 大学病院, 助教 (20580640)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 神経変性疾患 / PDI / S-ニトロソ化 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的な高齢化の進展に伴い、神経変性疾患の患者数は増加の一途を辿っている。しかしながら、神経変性疾患の根治療法は未だ確立していない。このため、神経変性疾患の根治療法・効果的予防法の確立は健康長寿社会の実現に向けた喫緊の課題である。近年、神経変性疾患患者の死後脳からS-ニトロソ化 (SNO化) Protein Disulfide Isomerase (PDI) が共通して検出され、異常タンパク質の蓄積、ひいては神経変性の原因と考えられている。これまで、PDI のSNO 化は活性中心であるCGHC モチーフに生じ、SNO 化による機能不全が神経変性の要因と考えられてきた。しかしながら、近年、この仮説と矛盾した知見がいくつか報告された。申請者は神経変性疾患におけるPDI のSNO 化は活性中心のみならず、基質結合部位 (b’domain) のシステイン残基で生じ、基質タンパク質との結合が変化することでmisfolding を加速するのではないかと考えた。ヒト神経芽細胞腫由来SH-SY5Y 細胞にSNO化剤としてニトロソシステイン (SNOC) を30分添加したところ、著しいPDIのSNO化が検出された。さらに、SNOC添加30分後、SNOCを含まない培養液に置換し、24時間培養したところ、依然としてSNO化PDIが検出された。続いて、SH-SY5Y細胞に野生型PDI、PDI C343Sをそれぞれ安定発現した細胞株を作成し、同様の実験を行った。その結果、PDI wt/SH-SY5Y細胞では24時間後までSNO化PDIが検出された一方、PDI C343S/SH-SY5Y細胞ではSNO化PDIは検出されなかった。以上の結果からPDIのSNO化はb' domainにおいても生じることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では神経細胞におけるPDI b' domainのSNO化の検証、及び、神経変性の発症・進展との関連を明らかにすることを目的に検討を行っている。2018年度は当初の予定通り、ヒト神経芽細胞腫由来SH-SY5Y 細胞におけるPDI b' domainのSNO化を明らかにした。さらに、次年度に使用する疾患モデル細胞株の作成に着手している。以上の進行状況から、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度はPDI b' domainのSNO化と神経変性の発症・進展との関連を明らかにすることを目的に検討を行う。PDI wt/SH-SY5Y細胞、PDI C343S/SH-SY5Y細胞から神経変性疾患モデル細胞株を作成し、PDI b' domainのSNO化と神経変性指標の関連を検証する。なお神経変性の指標として、細胞内活性酸素量、ER ストレス (リン酸化IRE1α、 リン酸化PERK、Cleaved ATF6 タンパク質量)、Unfolded Protein Response (UPR) (splicing XBP1、ERdJ4、ATF4、CHOP、Bip mRNA量)、神経細胞死により評価する。
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