2018 Fiscal Year Annual Research Report
リツキシマブによるインフュージョンリアクションの発症機序と軽減手法に関する研究
Project/Area Number |
18H06104
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
廣部 祥子 大阪大学, 薬学研究科, 講師 (70644582)
|
Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
Keywords | infusion reaction / 抗体医薬品 / リツキシマブ |
Outline of Annual Research Achievements |
大阪大学医学部附属病院血液腫瘍内科において、リツキシマブを投与された患者を対象とし、インフュージョンリアクションの発症状況を明らかにすべく、診療録を用いたレトロスペクティブ調査を行った。2013年9月~2018年12月の機関にリツキシマブを当院血液腫瘍内科にて初回投与された症例は232例であった。232例について、年齢、性別、腫瘍の組織型、レジメン、生化学検査値、IR の発現件数、重症度、症状 (投与後に発現した発熱、悪寒、悪心、頭痛、疼痛、そう痒、発疹等) 、IR 発現時の投与速度、前投薬の有無等の情報について収集を完了し、当院血液腫瘍内科におけるインフュージョンリアクションの発症が46%であることを明らかとした。 また、レトロスペクティブ調査の内容も踏まえて、当院血液腫瘍内科の医師と、リツキシマブによる治療を開始する患者を追跡・観察する前向き研究の実施について検討を開始した。232例の情報からリツキシマブを投与される患者の疾患や病態が非常に多岐にわたることが明らかとなり、前向き研究のプロトコルを適切に作成・実施するためにも、まずはすでに取得している血液検体を用いた解析を実施することとした。すでに患者基本情報を取得している232例のうち、87例について包括同意を得たうえでリツキシマブ投与前の血液検体を取得・保管していた。87例のうち、リツキシマブ投与を含む4つのレジメンを適用され、疾患がびまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (DLBCL) または濾胞性リンパ腫 (FL) の症例に絞ったところ、52例となった。これらの血液検体について、サイトカインやケモカイン等の免疫学的因子の測定・解析を実施予定であり、現在倫理審査委員会の審査を受けているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、診療録を用いたレトロスペクティブ調査については、対象期間を3年程度とし、症例数は100例を目指していたが、より精度よく解析するために対象期間を拡大し、予定の倍以上にあたる232例の解析を進めている。また、前向き研究に関する研究準備を進める予定であったが、レトロスペクティブ調査から明らかとなった情報も踏まえて、医師と相談し、包括同意を得て取得・保管している血液検体を用いた研究を実施する協力体制を得ることができた。本研究は当初の予定とは少し違った研究手法へと変更をしてはいるが、おおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
大阪大学医学部附属病院血液腫瘍内科において、リツキシマブを初回投与された232の症例について、臨床検査値に関するさらなる情報を集め、解析を進める予定である。現在、臨床検査値は白血球数 (WBC)、リンパ球数、ヘモグロビン値 (Hb)、血小板数 (PLT)、乳酸脱水素酵素 (LDH)、C反応性タンパク (CRP)、可溶性IL-2レセプター (sIL-2R) の情報を収集し、IRの発現およびその重症度と調査項目との因果関係を評価する予定である。また、2018年に新医薬品として承認され、リツキシマブと同じ抗原であるCD20に対する抗体医薬品であるオビヌツズマブ (商品名:ガザイバ) についても診療録を用いたレトロスペクティブ調査を行う予定である。 大阪大学医学部附属病院において、リツキシマブによる治療を開始する患者を追跡・観察する前向き研究を実施し、実臨床で測定している検査値だけでなく、サイトカインやケモカイン等の免疫学的因子も併せて解析する予定で準備を進めていた。しかし、リツキシマブを投与される患者の疾患や病態が様々であることから、前向き研究における研究対象を定める基礎情報とすべく、すでに血液腫瘍内科において包括同意のもと薬剤投与前に採取された血液検体を用いたサイトカイン・ケモカインの測定を実施することとし、現在倫理審査委員会の承認申請等の手続きを進めている。前述したレトロスペクティブ調査の情報と併せて解析し、IRの発現およびその重症度とサイトカイン・ケモカイン等の免疫学的因子との因果関係を評価する予定である。
|