2019 Fiscal Year Research-status Report
環状ホスファチジン酸類縁体を用いた多発性硬化症の新規治療薬開発
Project/Area Number |
19K21229
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
山本 梓司 埼玉医科大学, 保健医療学部, 助教 (70823318)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多発性硬化症 / クプリゾン / 2ccPA |
Outline of Annual Research Achievements |
多発性硬化症(MS)は、神経軸索を取り巻くミエリンが破壊される「脱髄」を特徴とする中枢神経系の難治性疾患である。運動障害や感覚障害などの神経症状が再発と寛解を繰り返して進行し、最終的に車イス、ベッド生活を余儀なくされ健康寿命を著しく低下させる。MSは、「自己免疫性」と「非自己免疫性」の2つのメカニズムを併せ持つ。現在実用化されているMS治療薬は自己免疫作用の抑制が主流であり、再発を抑制する対症療法には治療効果が示されているが、再発予防やMSの病態進行を抑制する効果は認められておらず、根本的治療薬は存在しない。 環状ホスファチジン酸(Cyclic phosphatidic acid: cPA)は、真性粘菌より単離された独特な環状リン酸構造を持つ脂質メディエーターである。cPAは、神経成長因子NGFと同様に顕著な神経細胞生存促進作用と、神経突起伸長促進作用を示し、さらには一過性脳虚血による海馬遅発性神経細胞死を抑制することが報告されている。申請者は既に、非自己免疫性MS実験モデルマウスである Cuprizone(CPZ)誘導脱髄モデルマウスを作製し、cPA投与による脱髄抑制効果、運動障害改善効果を明らかとした(S. Yamamoto et al, Eur J Pharm 2014)。cPAを治療薬として応用する為、より高い生体内安定性をもつ化学合成されたcPA誘導体である 2-carba-cPA(2ccPA)が開発された。申請者は自己免疫性および非自己免疫性MSモデル動物を作製し、2ccPA投与し病態解析を行った。2ccPAは自己免疫性のMS病態を改善し、非自己免疫性モデルにおいて神経炎症の抑制を介して脱髄を抑制するのみでなく、再ミエリン化を促進する可能性が明らかとなった(S. Yamamoto et al, J Neuroinflammation 2017)。 本研究は2ccPA の脱髄抑制及びミエリン再生におけるメカニズムを明らかとするため、 2ccPAの体内動態解析およびGenechipを用いた網羅的遺伝子発現解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
cPA及び2ccPAは安全性試験をクリアし、臨床応用に向けた研究を進めている(特許取得済:PCT/JP2014/051748)。Genechipを用いた網羅的遺伝子発現解析も現在進行中である。 2ccPAの体内動態を解析する為、2ccPAを動物に投与し、組織サンプルを採取し、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)を用いて体内動態解析を行った。腹腔内投与した2ccPAは脳においても検出された。(S. Yoshibumi et al, Journal of Chromatography B(申請者は第5著者))2ccPAは血中を通り脳へ移行し、脱髄抑制に関与する可能性が示唆された。 一方で、脳での2ccPA量が低く検出されたことにより、2ccPAは生体内で代謝され化学構造の変化が起こる可能性が示唆された。従って、2ccPAの代謝構造物である2ccPA類縁体を作製し、脱髄モデルマウスに対する効果を検討した。雄性C57BL/6jマウスを0.2%クプリゾン含有餌で5週間飼育しMSモデルマウスを作製した。2ccPA類縁体は連日投与した。5週間飼育後、脳を採取し、脳梁組織のミエリン量を病理学的に測定した。また、ロータロッドを用いて運動機能の評価も行った。2ccPA類縁体は脱髄を抑制し、運動機能の低下を改善した(特許申請中)。代謝産物である2ccPA類縁体においても脱髄抑制効果を有しており、生体内で2ccPAが代謝され脱髄抑制効果を発揮する可能性が示唆された。 また、2ccPAおよび2ccPA類縁体をMS治療薬として応用するため、再現性実験を行うべく外部研究施設(日精バイリス株式会社)に委託試験を要請し、2020年5月19日より委託試験を開始した(試験番号10474)
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Strategy for Future Research Activity |
現在、日精バイリス株式会社による2ccPA及び2ccPA類縁体を用いた再現性試験を遂行中である。クプリゾン誘発脱髄モデルマウスを作製し、2ccPA及び2ccPA類縁体を投与する。薬効の対照薬としてフィンゴリモド塩酸塩及びフマル酸ジメチルとの比較検討を行う。対照薬はいずれもMSの再発を抑制する治療薬として臨床応用されている免疫修飾薬である。MSモデルマウス作製後、ロータロッドを用いた運動機能を評価、また脳切片を作製しミエリン染色による脱髄程度の評価を行う。
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Causes of Carryover |
現在、2ccPA及び2ccPA類縁体を用いた再現性試験を日精バイリス株式会社に委託し、遂行中である。前年度の研究費は、委託試験における前検討に使用した。本年度の本試験に研究費を使用する為、繰り越し申請を行った。
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Research Products
(1 results)