2018 Fiscal Year Annual Research Report
選択的抗嫌気性活性の解明を指向したエフロトマイシンの収束的不斉全合成
Project/Area Number |
18H06112
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
池田 朱里 北里大学, 感染制御科学府, 特任助教 (40825056)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 抗生物質 / 抗嫌気性菌活性 / 収束的不斉全合成 / エフロトマイシン / 偽膜性大腸炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、重篤度の高い疾患として知られる偽膜性大腸炎の原因菌である嫌気性菌C.difficileに対して、選択的かつ強力な抗菌活性を示したエフロトマイシンに着目し、その幅広い誘導体創出を可能とする収束的な不斉全合成経路を確立することを目的としている。本研究課題の立案にあたり、申請者はエフロトマイシンを4つのフラグメント(ピリドン環フラグメント、フラン環フラグメント、6員環アセタールフラグメントおよび糖フラグメント)に分割し、それぞれを最終段階にて連結させる収束的な経路を提案した。提案した経路は、各フラグメントに対して種々の誘導化を行うことで、効率的に多様なエフロトマイシン誘導体の創出が可能であり、今後の選択的な抗菌薬の開発研究において薬効発現に関する重要な知見を与え得ると期待できる。 今年度、申請者は4つに分割したフラグメントのうち、ピリドン環フラグメントおよび6員環アセタールフラグメントの構築に着手してきた。ピリドン環フラグメントにおいては、初期案としてWinreb ketone合成法を用いる経路を計画していたが、種々の検討によって、よりシンプルなアルデヒドとの反応を用いる経路へと短縮化することに成功した。また本経路は副生成物が出来にくい反応が多く、精製段階を経ずに次の反応を行えることから、環境負荷も少ない構築法である。また一方、6員環アセタールフラグメントの構築では、種々の検討を行った結果、同炭素に結合している2つのメチル基の立体障害が反応条件や合成経路に大きな影響を与えることが見いだされた。すなわち、保護基の微調整が重要である知見を得たことから、TBDMS基やTIPS基を始めとする様々な水酸基の保護基を検討している。今後は、本フラグメントが持つ多くの水酸基をシャープレス不斉エポキシ化を用いて立体選択的に構築する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における進捗状況はおおむね順調に進展していると考える。 申請者は、本研究課題を行うにあたり、標的であるエフロトマイシンを4つのフラグメントに分割し、最終段階で連結する収束的な合成経路を提案している。今年度は、その4つのフラグメントのうち、ピリドン環フラグメントおよび6員環アセタールフラグメントの構築に着手してきた。上記にも述べたように、種々検討を進めたところ、提案していたより簡便な経路にて目的とするピリドン環フラグメントの構築を達成している。また、本経路にて最も構築が困難であると予想していた6員環アセタールフラグメントの構築では、目的とするフラグメントの構築は達成できていないものの、今後の反応条件検討に大きな影響を与えるメチル基について知見を収集できた。その得られた知見をもとに、目的のフラグメント構築を効率よく達成できると考えている。また、3つめのフラン環フラグメントにおいては、すでに合成経路を詳細に提案しており、その合成も順次進めていく予定である。 以上のことから、若干の予定と異なる点もあるものの、本研究課題は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、申請時に立案した合成経路に従い進めていく。 まず初めに、現在着手している6員環アセタールフラグメントの構築を引き続き進めていく予定である。本フラグメントに関しては、昨年度に得た情報に基づき水酸基の保護基を検討しており、その後シャープレス不斉エポキシ化反応を用いることで、エフロトマイシンの水酸基の位置および立体選択的な導入を進める。また本フラグメントが終盤に差し掛かる頃には、フラン環フラグメントの構築に着手する予定である。本フラグメントの構築には、前半部分での増炭を目的とした3成分カップリング反応を計画しており、本反応が可能となれば、合成過程を著しく短縮化できるものと期待している。 またこれらフラグメントの構築過程において、先に述べた立体障害などの問題が生じる可能性は十分に考えられるため、その都度、新たな保護基の検討や合成経路の立案など柔軟な対応を取ることで、最終目的であるエフロトマイシンの収束的な不斉全合成経路を確立していく。
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