2018 Fiscal Year Annual Research Report
自閉症治療に対する新規DDS開発 -経鼻投与によるoxytocinの脳内送達-
Project/Area Number |
18H06118
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kobe Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
田中 晶子 神戸薬科大学, 薬学部, 特任助教 (30824320)
|
Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
Keywords | 鼻腔内投与 / 脳内送達 / オキシトシン / 脳内動態 / 生物薬剤学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は オキシトシン (OXT) の鼻腔内投与後の脳送達性を向上する新たな DDS を開発することで、OXT 鼻腔内投与による ASD 治療法を構築することを目的とする。すなわち、OXT に吸収促進効果を有する脂肪酸修飾を施した誘導体あるいは OXT の鼻腔内滞留性を向上させる添加剤を添加した製剤を開発することで、OXT の鼻粘膜透過性を改善するとともに、鼻腔から脳への直接移行性の向上を目指す。 まず、OXT に対してカプロン酸等の短鎖脂肪酸修飾体を作製した。その結果、膜透過性は高まったものの、溶解性が非常に低かった。この短鎖脂肪酸修飾 OXT をマウスに鼻腔内投与し脳移行性を評価したが効率的な脳移行性を示さなかった。この結果から、膜透過性と溶解性のバランスのとれた短鎖脂肪酸修飾体を作製する必要があると考えられる。 次に、microdialysis 法 (MD 法) を用いた OXT の脳移行性を評価した。まず基礎的検討として、MD 法の際に使用する透析 probe の種類(透析膜の分子量サイズの大・小)、シリンジの流速(3 uL/min, 5 uL/min) を検討した。その結果、OXT の透析 probe からの回収率は透析膜の分子量サイズの大きい probe, 透析膜の分子量サイズの小さい probe の順に大きくなり、本実験には透析膜のない probe あるいは透析膜の分子量サイズの大きい probe を使用することにした。また、流速については、3 uL/min が 5 uL/min より高濃度に回収できたものの、回収量自体は少なくなってしまうため、回収濃度と回収量のバランスから 5 uL/min で実験を進めることにした。本年度はこの基礎検討を元に OXT あるいは OXT 修飾体の脳移行性を検討する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
OXT に対してカプロン酸等の短鎖脂肪酸修飾体を作製した結果、脂溶性は高まったが、水溶性が非常に低い値を示した。その後、この短鎖脂肪酸修飾 OXT を DMSO を少量用いて溶解し、マウスに鼻腔内投与後の脳移行性を評価したが効率的な脳移行性を示さなかった。これは、鼻腔内投与すると通常 CSF などを介して脳に直接移行するが、水溶性が非常に低いため CSF に移行することができなかったと考えられる。したがって、引き続き脂肪酸修飾体を作製し、脂溶性と水溶性のバランスに優れた修飾体を決定する必要があると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) OXT の脳内送達に対する短鎖脂肪酸修飾の影響:カプロン酸等を付加した脂肪酸修飾体を作製した結果、脂溶性は高まったものの水溶性が非常に低い結果となった。2019 年度も引き続き、脂肪酸修飾体を作製し、脂溶性と水溶性のバランスに優れた修飾体を決定する。 (2) OXT の鼻腔内滞留性の向上を目指した粉末製剤あるいは溶液製剤の作製:(1)の作製を進めると共に、OXT 単独の脳移行性を高める異なる方法として、上皮細胞の繊毛運動による OXT の鼻腔外への排泄を抑制し、鼻腔内滞留性を改善するために、溶解に伴い粘性を示すヒドロキシプロピルセルロースやカルメロースを添加する。添加濃度によっては、粘性の増大に伴い、基剤内での OXT の拡散速度が律速となる場合があるため、至適な添加量を設定する必要がある。 (3) 鼻腔内投与後の動態解析、microdialysis (MD 法) による OXT の脳移行性及び薬理効果の検討:(1)及び(2)の結果に基づいて、最適化した修飾体と製剤処方で、動物に投与する製剤を調製する。マウス、ラットの鼻腔内に最適化製剤を投与した後、体内動態ならびに脳移行性を評価する。評価には microdialysis 法を用い、脳細胞外液中の OXT 濃度を継時的に測定し、血漿中 OXT 濃度とともに薬物速度論解析を行う。同時に、血中コルチコステロン濃度を指標に OXT の薬理効果を評価し、体内動態や脳移行性との関連を明らかにする。
|