2019 Fiscal Year Annual Research Report
酸棗仁湯の脳由来神経栄養因子(BDNF)産生能のメカニズム解析
Project/Area Number |
19K21237
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
澤本 篤志 松山大学, 薬学部, 特任助教 (70760388)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 酸棗仁湯 / 脳由来神経栄養因子 / 海馬 / 育薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳由来神経栄養因子(brain-derived neurotrophic factor; BDNF)は記憶や学習などの高次脳機能発現において重要な役割を果たす分泌生蛋白質である.近年の多くの研究により,海馬におけるBDNF発現の低下と,認知症やうつ病といった中枢神経疾患の発症には相関性が示されており,海馬におけるBDNF発現低下の抑制はこれらの疾患予防において重要と考えられている.申請者はこれまでに,不眠症の改善に用いられる酸棗仁湯が海馬におけるBDNF産生を促進することを見出したが,その機序については不明であった.本研究では,育薬の観点から酸棗仁湯構成生薬およびその含有成分に着目し,酸棗仁湯が有するBDNF産生促進作用のメカニズム解明を試みる. 平成30年度は酸棗仁湯の君薬である“サンソウニン”が培養細胞系においてBDNF産生を促進すること,マウスの空間作業記憶を向上させることなどを明らかにした.そこで本年度は,BDNF産生に関与する種々の細胞内シグナル伝達物質への影響について検討した.マウス神経芽細胞腫由来の株化細胞Neuro2a細胞にサンソウニン抽出エキス(SE)を添加したところ,cAMP依存性プロテインキナーゼA(PKA)シグナルが活性化されていたが,その他のシグナル伝達にはほとんど影響しなかった.さらに,SEを経口投与したマウスの海馬を解析したところ,培養実験の結果と同様にPKAシグナルの活性化が観察された.また,有意差はなかったがBDNF蛋白発現の増加傾向が確認できた.以上の結果より,サンソウニンのBDNF産生作用にはPKAシグナル伝達が関与することが示唆された.現在は,サンソウニンに多く含まれる植物性化学物質に焦点を当て作用機序解明に取り組んでいるが,PKAシグナル伝達を介してBDNF発現を増加させる化合物の発見には至っていない.
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