2019 Fiscal Year Annual Research Report
神経-グリア-血管連関の破綻におけるMMPの意義の解明と新規緑内障治療薬への応用
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19K21246
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
浅野 大樹 北里大学, 薬学部, 助教 (90821918)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 網膜 / 神経 / グリア / 血管 / MMP |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜は、神経細胞、グリア細胞(アストロサイト/ミクログリア/ミュラー細胞)及び血管構成細胞が情報交換(神経-グリア-血管連関)することにより恒常性を維持している。Matrix metalloproteinase (MMP)-9 は血管新生に関与するが、網膜障害時には視神経節細胞やグリア細胞において過剰に産生又は活性化され、細胞死を惹起する。N-methyl-D-aspartic acid (NMDA) を投与した新生仔期ラット (7日齢) の網膜において、投与 2 日後から視神経節細胞の脱落が、7 日後から毛細血管の脱落が生じる。昨年度の検討により、網膜内のMMP-9 の活性が視神経節細胞の脱落後に上昇し、その後に生じる毛細血管の脱落に関与する可能性が示された。 本年度は、神経が障害された網膜におけるMMP-9 の発現・活性化の調節機序について検討を行った。そして、NMDA 投与 2 日後、即ち、網膜神経はすでに脱落しているものの網膜血管は脱落していない時点において、① 白血球が血管内から網膜実質へ著しく浸潤しており、それらは MMP-9 を発現していること、そして ② 血管及び血管 に集積した MMP-9 発現白血球 の周囲において MMP の基質分解が亢進していること、が示された。 以上の結果より、視神経節細胞の脱落後に白血球が網膜血管内から網膜実質へ浸潤・遊走し、MMP-9 を産生・遊離することにより、網膜血管における MMP の基質の分解を促進することが、血管障害に寄与する可能性が考えられた。網膜神経障害時に、過剰に産生又は活性化された MMP が網膜血管を障害させて、更なる血流障害と神経障害を招く可能性を示唆する本研究成果は、神経-グリア-血管連関のより深い理解をもたらしたとともに、緑内障等の網膜疾患の進行機序の一端を解明したものと考えられる。
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