2018 Fiscal Year Annual Research Report
ALK1下流遺伝子TMEM100の新規転写制御機構と血管形態形成における意義
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18H06134
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
劉 孟佳 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (50826922)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / ALK1シグナル / TMEM100 / 転写制御機構 / エンハンサー / 血管新生 / 新生仔網膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ALK1シグナルの新規下流遺伝子TMEM100について、(課題1)血管内皮特異的発現制御機構および(課題2)血管形成における分子機能の解明を目指している。TMEM100は典型的なALK1下流遺伝子群と異なり、SMAD転写因子による直接の転写制御を受けないことが、所属研究室の先行研究により明らかになっている。さらに、Bacterial Artificial Chromosome(BAC)-トランスジェニック(Tg)マウスを用いたレポーター解析により、これまでにマウスTmem100およびヒトTMEM100遺伝子の両者において遠位に存在する内皮細胞特異的エンハンサーの同定に成功している。課題1では、同定したTmem100内皮細胞特異的エンハンサーを制御する転写因子を同定するため、Luciferaseレポーター解析およびLacZレポーターTgマウス解析により内皮細胞での遺伝子発現制御において主要な役割を担っている転写因子を候補としてエンハンサー活性における機能を検討した。その結果、複数の転写因子がエンハンサー活性に重要であることを示唆する結果が得られた。 また、課題2ではTmem100の誘導型内皮特異的欠損マウス(iECKO)を作出し、胎生致死性を回避した網膜血管形成解析系を導入・確立した。Tmem100iECKO新生仔マウス網膜では血管新生の遅延をはじめとした様々な血管形成異常が観察された。さらに、内在性Tmem100-LacZノックインマウスを用いて新生仔網膜におけるTmem100の発現パターンを解析した結果、Tmem100が動脈内皮細胞特異的且つ経時的に特徴のある局所発現パターンを示すことが明らかになった。 以上に示すように、TMEM100の発現制御機構および分子機能の解明に向けて順調に研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題1においては当初の計画通り、in vitroおよびin vivoの検証によりTmem100の内皮細胞特異的エンハンサーを制御する候補転写因子を特定することができた。今年度はそれら候補転写因子とTmem100内皮細胞特異的エンハンサーの直接結合や、候補転写因子欠損によるTmem100の発現減少を証明する必要がある。課題2については、新生仔網膜解析系を用いてTmem100の発現パターンおよび欠損による表現型が確認できた。今後は引き続きTmem100の血管形成過程での生命現象における役割を明らかにすることを目指し、より詳細な表現型解析に加えTmem100欠損で影響を受ける下流因子の探索も行う。これらの項目について本年度内の完了は妥当であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績に記載の通り、TMEM100の内皮細胞特異的エンハンサー領域内で複数の転写因子が発現制御に関わっていることが示唆されたため、本年度はChIP解析によりTMEM100内皮細胞特異的エンハンサーの候補転写因子への結合を証明するとともに、この転写因子欠失マウスにおけるTmem100発現解析を行う。また、候補転写因子結合配列を含むTmem100内皮細胞特異的エンハンサー領域をCRISPR/Cas9遺伝子編集により欠失したマウスでTmem100発現変化を解析する。これらの検討から、課題1ではALK1シグナルによる発現制御のみでは説明できなかったTMEM100の血管内皮特異的発現機構を明らかにすることを目指す。 課題2では、Tmem100の内皮細胞における欠損により網膜血管発生異常を示すことを確認したため、今後は引き続き細胞レベルの詳細な表現型解析を行う。特に、Tmem100欠損が引き起こす内皮細胞異常により生ずる壁細胞動員能への影響に着目する。この解析から得られた表現型が胎生期のTmem100欠損による血管発生異常においても共通して生じているか明らかにするため、網膜に加えてTmem100欠損マウスの胎仔・yolk sacも用いて検証を進める。さらに、Tmem100iECKOマウスから内皮細胞を単離し、RNA sequencingにより網羅的遺伝子発現解析を行うことでTmem100欠損によるシグナル伝達異常の解明を試みる。
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