2018 Fiscal Year Annual Research Report
クリミア・コンゴ出血熱ウイルスの細胞侵入機構の解明と治療標的の同定
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18H06146
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
櫻井 康晃 長崎大学, 感染症共同研究拠点, 助教 (00818338)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | クリミア・コンゴ出血熱ウイルス / ハザラウイルス / シュードウイルス / 化合物ライブラリー / 特異的阻害剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス(CCHFV)の細胞侵入過程に対する阻害剤を同定し、その作用機序を解明する。その中で2018年度は、シュードウイルスを用いた侵入阻害剤の同定を目標としていた。 まず、水疱性口炎ウイルス(VSV)由来の粒子核と、CCHFVの表面糖タンパク質を持つシュードウイルス(VSVΔG-CCHFV-G)の作製を試みたが、効率的な作製は出来なかった。そこで代替案として、CCHFVのモデルウイルスであるハザラウイルス(HAZV)の表面糖タンパク質を持つシュードウイルス(VSVΔG-HAZV-G)の作製を試みた。種々の条件を検討した結果、ヒト肝臓由来のHuh7細胞を用いて効率的なVSVΔG-HAZV-Gの作製に成功した。S/N比(ノイズに対する感染シグナルの比率)は100倍以上であるため、化合物の評価等には十分使用出来る。また、CCHFVやHAZVを含むナイロウイルスのシュードウイルス作製方法の中では、最も効率の良い方法を開発することが出来た。 次に、分子標的が既知である1280種類の化合物から構成されているライブラリーを購入した。そして、Huh7細胞を10 uMの各化合物で処理し、VSVΔG-HAZV-Gを感染させ、翌日に感染効率の評価を行った。その結果、数十個の化合物において、処理した細胞における感染シグナルの70%以上の低下が認められた。それらがVSVΔG-HAZV-Gの感染に特異的な効果であることを検討するために、VSVの表面糖タンパクを持つVSVΔG-VSV-Gに対する阻害効果も評価した。その結果、VSVΔG-VSV-G よりもVSVΔG-HAZV-Gに対する阻害効果が有意に高い複数の化合物を同定した。今後、これら化合物の標的分子を解析することで、クリミア・コンゴ出血熱に対する治療標的の同定に繋がることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画では、2018年度には、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス(CCHFV)の表面糖タンパク質を持つシュードウイルスの作製を予定していたが、過去に報告されている手法の再現性が取れず、残念ながらまだ効率的な作製には至っていない。しかし、そのモデルウイルスであるハザラウイルス(HAZV)のシュードウイルスについては、効率的な作製手法の開発に成功した。更に、そのシステムを用いて1000種類以上の化合物のスクリーニングを行うことが出来、その結果、特異的な感染阻害剤を複数同定することに成功した。 以上より、当初の計画とは一部異なる手法を採用することになったが、期待していた結果に準ずる結果を得ることが出来た。従って、本研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず2018年度に同定した化合物の野生型ウイルスに対する効果を検証する。野生型ハザラウイルス(HAZV)は既に手元にあるため、それを用いた感染実験を行う。そこで感染阻害効果を示した化合物に関しては、海外のBSL4施設との共同研究により、野生型クリミア・コンゴ出血熱ウイルス(CCHFV)に対する感染阻害効果の検証を行う。 上記の実験と併せて、2018年度に成功に至らなかったCCHFVのシュードウイルスの効率的な作製方法の開発も行う。現在所持しているCCHFVの表面糖タンパク質発現ベクターを用いた場合、目的タンパク質の発現量が極めて低いことが分かった。そこで、コドン最適化されたCCHFVの表面糖タンパク質をコードする遺伝子を核酸合成により作製する。更に、必要であれば過去の報告に従い、その細胞質ドメインを欠損した変異型を作製する。それらを用いて、種々の条件を検討し、シュードウイルスの作製方法の最適化を目指す。その方法を確立した上で、2018年度に同定した化合物の感染阻害効果を確認する。 更に、シュードウイルスと野生型ウイルスの両方を阻害する化合物を同定した後、その標的分子を探索する。その中で、CCHFVやHAZVの細胞侵入過程に必要な因子を、RNAi等を用いて同定する。可能であれば、その因子の感染過程における機能解析も行う。
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