2019 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌による新規脂肪酸代謝物の肝疾患に対する作用機構の解明
Project/Area Number |
19K21261
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
神谷 知憲 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (80823682)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 腸内細菌 / NASH / リノール酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内にてリノール酸(LA)は、脂質メディエーターであるプロスタグランジンに代謝変換される一方で、細菌独自の酵素により代謝したLA細菌代謝物(bLAs)は、炎症抑制などの機能性が報告されているが、生体内での効果はわかっていない。そして、肥満は様々な疾患の原因となり、肥満により増加した腸内細菌代謝物は肝腫瘍形成が促進する。肥満により誘導される肝癌は、非アルコール性脂肪肝炎の慢性化により、腫瘍が形成される。上記のことから、肥満誘導性肝癌マウスモデルの餌中のLA含有量を調整した結果、高LA餌にて肝腫瘍形成数の減少が認められた。本研究では、肥満誘導性肝癌に対する細菌のLA代謝物の効果を明らかにすることを目的とした。 まず、肝臓中の遊離脂肪酸を分析した結果、bLAsの蓄積が確認され、さらに高LA酸餌にて有意に上昇していた。そして、高LA酸食マウスの糞便懸濁液とLAを共培養し、LA代謝能を有する菌の単離に成功し、乳酸桿菌属の菌株であることが判明した。この菌株とLAとを休止菌体反応にて作用させた後、bLAs産生能を確認したところ、72時間後には80%程度bLAsに変換した。糞便中の腸内細菌叢を分析した結果、高LA食給餌により乳酸桿菌属が40%増加することがわかった。低LA、高LA含有高脂肪食を給餌し、4週齢から4週毎に肝臓の病態をHE染色にて確認したところ、低LA食では16週齢から肝実質細胞の風船化、及び脂肪滴の蓄積が確認されたが、高LA食では20週齢以降になるまで脂肪肝の様相は示さなかった。 これらの結果から、LA摂取によりLAを代謝可能な乳酸桿菌属に有意な腸内環境に変化していることが示され、その結果、腸肝循環によりbLAsの肝臓への蓄積が確認されたと考えられる。高LA食にて脂肪肝が抑制される現象が、腸内細菌、または摂取した脂質の影響であるのか、病態形成の原因に迫る課題として注目される。
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