2018 Fiscal Year Annual Research Report
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18H06148
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
加藤 琢哉 北里大学, 医学部, 助教 (00551970)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 浸潤 / 形態形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景・目的】腫瘍組織の形態学的特徴は病理医によるがんの診断において重要な意味を持つ。この形態学的特徴はがん細胞が過去にどのように浸潤・増殖したかを反映しており、このことが個々のがんの形態が悪性度と関連づけられる原因と考えられる。しかしながら、どのような浸潤様式によりがん組織の形態が形成されるのか、その詳細なメカニズムについては不明な点が多い。本研究では浸潤部の形態形成においてもアクトミオシン収縮の空間的制御が必要である、という仮説を元にがん組織形態の決定機構を解明するとともに、それらの浸潤形態ががんの悪性化、特に浸潤部位でのがんの増殖にどのような影響を与えているかを検討することを目的とした。 【研究成果】アクトミオシン収縮の重要性を検討するため、A431-MMP14 overexpression(MOE)細胞へのアクトミオシン制御分子であるROCKの阻害剤投与およびタモキシフェン誘導性活性化変異体ROCK:ERによりアクトミオシン収縮の空間的配置をリン酸化MLC (pMLC)の免疫染色で検討したところ、コントロール細胞では細胞集団の外縁部のみにみられたpMLCの染色が、ROCK阻害剤により消失し、ROCK:ERの活性化によって細胞間接着部位にも染色がみられる様になり、アクトミオシンの空間的制御を撹乱可能であることがわかった。そこで、これらの操作を3次元浸潤系で行なったところ、ROCK阻害剤、ROCK:ERの活性化はどちらも浸潤部の肥厚化を抑制することが明らかとなった。これらの結果は、浸潤部でがん細胞が周囲にスペースを作って肥厚化するためにはアクトミオシンの活性が細胞集団の外縁部に限局されていることが重要であることを示している。 ヌードマウスを用いた腫瘍のリンパ節転移実験では浸潤部の著しい肥厚化が見られたMOE細胞がコントロールの細胞と比較してより転移しやすい傾向を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では腫瘍浸潤部の形態形成に、がん細胞集団内におけるアクトミオシン収縮の空間的配置が重要となるという仮説を検証することを当初の目的としている。現在までに、アクトミオシンの上流制御分子であるROCKの阻害剤や異所性の活性化によりアクトミオシン収縮の空間的制御を乱すことで腫瘍浸潤部の肥厚化が抑えられることを明らかにしており、仮説が正しいものであったことを示す結果を得ており、初年度の成果としては十分なものを得たと考えている。また、in vivoの実験も並行して行い、腫瘍浸潤形態と転移傾向についての関連性を示すデータが得られ、次年度の研究へとつながる結果となったと考えている
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は申請当時に想定した当初の目的を達成できたため、引き続き研究計画に則って研究を進める。具体的には以下の3項目に示した通りに実施する: ①浸潤部の肥厚化が、浸潤部位におけるがん細胞増殖にどのように影響するかをROCK阻害剤、ROCK:ER発現を利用して3次元培養により検討する。 ②ヌードマウスを用いた異なる浸潤形態を示す細胞の転移能については検討済みであるが、in vivoにおける腫瘍の増大については計測期間の違いにより検討できていない。そのため、今後は腫瘍増殖についても検討する。また、アクトミオシン収縮を撹乱した際に増殖・転移にどのような影響が出るかについても検討する。 ③実際のがん組織では異なる表現系のがん細胞が共存して形態を形成している。そのため、今後の実験において現在われわれの有する異なる浸潤形態を示すがん細胞の共培養による浸潤及び浸潤部の形態への影響を検討する。
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