2018 Fiscal Year Annual Research Report
肺癌における活性イオウ分子種とイオウ代謝酵素の役割の解明
Project/Area Number |
18H06155
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
突田 容子 東北大学, 大学病院, 医員 (50822566)
|
Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
Keywords | CARS2 / 肺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、活性イオウ分子種の一種であるシステインパースルフィド(Csy-SSH)とその合成酵素であるシステイニルtRNA 合成酵素(cysteinyl-tRNA synthetase:CARS)2の肺癌における役割を解明することである。 肺癌の臨床病態とCARS2発現との関連の解明においては、まず、qRT-PCRにより同一検体の非癌部に比して癌部のCARS2の遺伝子発現が低下していることを明らかにした。次に約30例の肺癌組織切片について免疫組織化学でCARS2の発現を検討し、術後再発症例は非再発症例に比してCARS2の発現が低い傾向を掴んだ。CARS2はミトコンドリアに局在するため、ミトコンドリア外膜タンパク質であるTOMM20抗体を用いてミトコンドリア量は同等であることも確認している。これらの結果はCARS2の発現低下が癌の発症や悪性化に寄与する可能性を示唆する。次に、CARS2の発現を低下させた時に起こる事象をin vitroで確認することとした。ヒト肺癌細胞株であるA549へのsiRNA処理により細胞形態が明らかに紡錘状に変化して細胞周期に変化が生じることも分かったが、細胞増殖速度に明らかな変化はなかった。ノックダウンで生じる変化の解析は今後の検討課題である。また、肺癌20検体におけるqRT-PCRの検討で、CARS2と他のイオウ代謝関連酵素であるsuccinate quinone reductase (SQR)、Ethylmalonic encephalopathy 1 protein(ETHE1)の遺伝子発現には相関関係があることを発見した。このことは個々の癌でイオウ代謝への依存度が異なる可能性を示唆するものである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は条件検討にも時間を要してしまったが、ヒト検体を用いた実験を進めることでCARS2の低下が肺癌の発症や悪性化に関与している、個々の癌でイオウ代謝への依存度が異なるという仮説を立てることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
①肺癌の臨床病態とCARS2発現との関連を明らかにする。 前年度にすでに抗CARS2抗体を用いて免疫組織化学で検討し、癌部よりも非癌部でCARS2の発現が低下していることを確認した。今年度は癌部と非癌部からミトコンドリアを抽出してCARS2の発現量をウエスタンブロット法により確認し、免疫組織化学との結果の一致を確認する。 ②肺癌におけるCARS2の役割を抗酸化作用の視点から解明する。 前年度にヒト肺癌細胞株であるA549へのsiRNA処理を行い、CARS2をノックダウンし、細胞形態の変化を確認している。活性イオウ分子種特異的な蛍光プローブを用いて細胞内の活性イオウ分子種の産生量を可視化し、CARS2ノックダウンによる活性イオウ分子種と酸化ストレスの変化を解析する。 ③肺癌におけるCARS2の役割をDrp1との観点から解明する。 Drp1の活性化はミトコンドリア分裂と癌の増殖を促進することが知られている。Drp1の活性化をGTPアガロースプルダウンアッセイにより評価し、ミトコンドリアの分裂能TOMM20染色して電子顕微鏡で評価する。A549へのCRAS2ノックダウン処理によるDrp1の活性化とミトコンドリア分裂の変化を解析する。
|
Research Products
(4 results)