2019 Fiscal Year Annual Research Report
シスプラチン耐性卵巣癌の新規治療標的分子TIE-1の機能解析
Project/Area Number |
19K21280
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
石橋 ますみ 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (20821383)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | TIE-1 / シスプラチン / DNA損傷修復 / PI3K |
Outline of Annual Research Achievements |
婦人科悪性腫瘍のなかで最も死亡率の高い卵巣癌に対する治療において、薬剤耐性が大きな課題であり、新規治療戦略の開発が必要とされている。今回の研究では、チロシンキナーゼ受容体型蛋白であるTIE-1を新規治療標的として見出し、その抗腫瘍効果の機序について検討した。先行研究で大規模siRNAスクリーニングを行い、卵巣癌の化学療法で主に用いられる抗がん剤のシスプラチンの感受性を最も高める分子としてTIE-1が抽出された。またTIE-1高発現の卵巣癌は予後不良であることが明らかとなり、TIE-1の臨床的意義が示された。本研究では、TIE-1が細胞のDNA損傷修復システムであるヌクレオチド除去修復機構を亢進させることにより、DNAに結合したシスプラチンを積極的に除去して抗腫瘍効果を減弱させていることが明らかとなり、TIE-1阻害とシスプラチンの併用が新たな治療戦略として示唆された。また、TIE-1は細胞増殖に関わるPI3K/Akt経路を亢進することも本研究で明らかとなった。TIE-1阻害は特にPI3Kが高発現している卵巣癌においてPI3K/Akt経路を抑制してアポトーシスを誘発し、高い抗腫瘍効果を示した。TIE-1阻害がPI3K高発現の卵巣癌細胞において選択的に抗腫瘍効果を示す理由として、PI3K高発現の卵巣癌では細胞増殖がPI3K依存的に起こっているためであると考えられた。卵巣癌の治療薬として既に報告されているPI3K阻害剤は強い副作用が問題となっており、PI3Kを標的とした治療においてTIE-1阻害が新たな選択肢となる可能性が示唆された。これらの結果より、TIE-1阻害は卵巣癌の新規治療戦略として有用である可能性が示された。
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