2018 Fiscal Year Annual Research Report
がん治療用ヘルペスウイルスを用いた、肉腫におけるウイルス療法の検討
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18H06185
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
田口 慧 杏林大学, 医学部, 助教 (40625737)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 肉腫 / がん治療用ウイルス / ヘルペスウイルス / PDX / ウイルス療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルス療法は固形がんに対する新規治療法であり、がん細胞は傷害するが正常細胞は傷害しないように遺伝子改変した「がん治療用ウイルス」を用いる戦略であるが、肉腫における検討はなされていない。その理由の一つとして、肉腫は希少疾患ゆえに前臨床研究に用いる研究材料を得難いことが挙げられた。 本研究の目的は、国立がん研究センターで樹立された肉腫PDX (patient-derived xenograft)を用いて、がん治療用ヘルペスウイルスT-01の効果を検証することで、希少難治がんである肉腫に対するウイルス療法を確立することである。T-01は、本邦発のウイルス療法薬として医師主導治験中のG47Δと同等の機能を持つ実験用ウイルスであり、本研究で得られた知見は直ちに前臨床データとして蓄積される。肉腫は既存治療の有効性が低いため、ウイルス療法が有効であれば治療体系のブレイクスルーとなる可能性がある。 研究計画全体としては、複数の肉腫PDX を用いて、ウイルス複製効率、殺細胞効果 (in vitro)、腫瘍縮小効果 (in vivo)、などを検討する予定となっている。 初年度は、6種類の肉腫PDXを用いた殺細胞効果 (in vitro)の実験を完了させた。また、腫瘍縮小効果 (in vivo)の検討に向けて、いくつかのPDXのマウスモデル(免疫不全マウスを用いた皮下腫瘍モデル)の検討も行った。おおむね順調に進捗しており、今後も研究計画に従って進めていく方針である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、6種類の肉腫PDX由来細胞株を用いた殺細胞効果 (in vitro)の実験を完了させている。 国立がん研究センターとの間で MTA 契約を行った肉腫PDX は、いずれも細胞株化もなされているため、in vitro の検討を行うことが可能である。一定数の細胞(2 x10^5 /well)をプレートに撒き、T-01 を2 段階の力価(MOI 0.1 および0.01)で感染させて、24 時間毎4 日間に渡って生細胞数をカウントした。同日に計測した陰性対照群の生細胞数に対する割合(%)で、T-01 の殺細胞効果を評価した。検討したほぼすべての細胞株で、T-01による良好な殺細胞効果が確認された。 一方、腫瘍縮小効果 (in vivo)の検討に向けて、いくつかの肉腫PDXのマウスモデル(免疫不全マウスを用いた皮下腫瘍モデル)の検討も行った。すでに候補となる細胞株とマウス種の組み合わせを複数見出しており、これらについて、最も安定して腫瘍形成される条件(細胞濃度、併用薬剤等)の最適化を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、研究は順調に進捗しているため、今後も研究計画に従って進めていく方針である。 すでにin vitroでのT-01の殺細胞効果の確認は取れているため、in vitroにおけるT-01 の複製効率の検討(複製能比較試験)も行う予定である。ウイルスは組織によって複製効率が異なり、それにより最終的な殺細胞効果にも違いが生じることが知られている。肉腫PDX に、一定のウイルス力価(通常はMOI 0.01)でT-01 を感染し、24 時間および48 時間後に組織を回収、内部のウイルスを回収して、それぞれのウイルス液でVero 細胞を用いた検定法によって複製後の力価を計測する予定である。 また、in vivoでのT-01 の抗腫瘍効果の検討も行う予定である。上記の通り、肉腫PDXのマウスモデルをこれまでに複数樹立しており、それらを用いてT-01の腫瘍縮小効果を検討する予定である。 以上の実験により、PDX という臨床に即した材料におけるウイルス療法の有効性を示せれば、「希少難治がんである肉腫に対する、T-01 を用いたウイルス療法」の臨床試験へと進む大きな根拠となることが期待される。
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