2019 Fiscal Year Research-status Report
がん治療用ヘルペスウイルスを用いた、肉腫におけるウイルス療法の検討
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19K21290
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
田口 慧 杏林大学, 医学部, 助教 (40625737)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 肉腫 / がん治療用ウイルス / ヘルペスウイルス / PDX / ウイルス療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウイルス療法は固形がんに対する新規治療法であり、がん細胞は傷害するが正常細胞は傷害しないように遺伝子改変した「がん治療用ウイルス」を用いる戦略であるが、肉腫における検討はなされていない。その理由の一つとして、肉腫は希少疾患ゆえに前臨床研究に用いる研究材料を得難いことが挙げられた。 本研究の目的は、国立がん研究センターで樹立された肉腫PDX (patient-derived xenograft)を用いて、がん治療用ヘルペスウイルスT-01の効果を検証することで、希少難治がんである肉腫に対するウイルス療法を確立することである。T-01は、本邦発のウイルス療法薬として医師主導治験中のG47Δと同等の機能を持つ実験用ウイルスであり、本研究で得られた知見は直ちに前臨床データとして蓄積される。肉腫は既存治療の有効性が低いため、ウイルス療法が有効であれば治療体系のブレイクスルーとなる可能性がある。 研究計画全体としては、複数の肉腫PDX を用いて、ウイルスの殺細胞効果および複製能比較試験(in vitro)を行ったのち、免疫不全マウスを用いたウイルスの腫瘍縮小効果の検討(in vivo)を行う予定となっている。 平成30年度は、6種類の肉腫PDXを用いた殺細胞効果の検討(in vitro)を完了した。令和元年度は、6種類の肉腫PDXを用いたウイルスの複製能比較試験(in vitro)を完了するとともに、肉腫PDXの免疫不全マウスモデルを用いた、ウイルスの腫瘍縮小効果の検討(in vivo)を開始した。令和2(最終)年度は、このin vivo実験を完了させて、プロジェクトを完結させることが目標である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、6種類の肉腫PDX由来細胞株を用いた殺細胞効果 (in vitro)の実験を完了させた(詳細は前回報告書に記載済み)。 令和元年度は、6種類の肉腫PDXを用いたウイルス複製能比較試験(in vitro)も完了した。国立がん研究センターとの間で MTA 契約を行った肉腫PDX は、いずれも細胞株化もなされているため、in vitro の検討を行うことが可能である。ウイルスは組織によって複製効率が異なり、それにより最終的な殺細胞効果にも違いが生じることが知られている。肉腫PDX に一定のウイルス力価(通常はMOI 0.01)でT-01 を感染し、24 時間および48 時間後に組織を回収、内部のウイルスを回収して、それぞれのウイルス液でVero 細胞を用いた検定法によって複製後の力価を計測した。 さらに、肉腫PDXの免疫不全マウスを用いた、ウイルスの腫瘍縮小効果の検討(in vivo)をスタートした。これまでの予備実験により、安定して皮下腫瘍モデルが作製可能な細胞株とマウス種の組み合わせを2種類見出しており、これらを用いた本実験を開始したところである。当初の計画期間(2年間)では予定の実験を終了しなかったため、補助事業期間を1年延長している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の通り、補助事業期間を1年延長したものの、研究次回は順調に進捗しており、今後も研究計画に従って進めていく方針である。 予定していたin vitroの検討(殺細胞効果および複製能比較試験)はすでに完了しており、令和2(最終)年度の主たる目標は、肉腫PDXの免疫不全マウスを用いた、ウイルスの腫瘍縮小効果の検討(in vivo)を完了させることとなる。すでに予備実験により、安定して皮下腫瘍モデルが作製可能な細胞株とマウス種の組み合わせを2種類見出しており、これらを用いた本実験を開始済みである。 皮下腫瘍が長径5 mm 前後になった時点で一定量のウイルス(T-01)を30G 針で腫瘍内に投与し、3 日毎に腫瘍体積を計測する。陰性対照群の腫瘍体積との比較によりウイルスの抗腫瘍効果を評価している。同様の実験を別セットでも行い、一定時点で皮下腫瘍を採取してウイルスによる抗腫瘍効果の機序解明実験(CD4・CD8 の免疫染色やFACS 解析などの免疫学的評価)も行う予定である。 以上の実験により、PDX という臨床に即した材料におけるウイルス療法の有効性を示せれば、「希少難治がんである肉腫に対する、T-01 を用いたウイルス療法」の臨床試験へと進む大きな根拠となることが期待される。
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Causes of Carryover |
上記の通り、肉腫PDXの免疫不全マウスモデルを用いた、ウイルスの腫瘍縮小効果の検討(in vivo)の本実験が完了しておらず、追加実験が必要となったため。 実験計画自体のめどは立っており、次年度使用分はマウスや試薬の購入費用に主に充てる予定である。
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