2019 Fiscal Year Research-status Report
経カテーテル大動脈弁留置術施行症例を対象とした多施設共同前向き研究
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19K21298
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 英弘 東京大学, 医学部附属病院, 特任講師 (70468510)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 経カテーテル大動脈弁留置術 / 大動脈弁狭窄症 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢化に伴って重症大動脈弁狭窄症(Aortic Stenosis; AS)の有病率が上昇することは疫学的に広く知られています。一方、有症候性の重症ASで外科大動脈弁置換術(Surgical Aortic Valve Replacement; SAVR)が必要な症例の約半数で実際にはSAVRが行われていないことが報告され、外科手術が困難なAS症例に対する低侵襲治療の必要性が認識されました。経カテーテル大動脈弁植え込み術(Transcatheter Aortic Valve Implantation; TAVI)は、SAVRが困難な重症AS症例に対する低侵襲治療として、全世界で急速に普及が進んでいます。最新のランダム化比較試験では、外科手術低リスクのAS症例を対象としても、SAVRに対してTAVIが同等あるいは優位であるとの報告も行われ、AS治療における大きなパラダイムシフトが起きています。しかし、わが国においては、2013年10月にTAVIが保険償還されて以降、すでに約6年が経過しているもののその浸透率は未だに低い状況です。この要因として、TAVIに関するエビデンスの大部分が欧米人を対象としたもので、アジア人(日本人)を対象としたエビデンスが圧倒的に不足していることが挙げられます。以上を背景として、申請者はわが国の実臨床でのTAVI施行症例における臨床エビデンスを確立するため、本邦有症候性重症AS症例に経大腿動脈アプローチでTAVIを施行した症例を対象とした日本国内最大規模となる多施設前向き観察研究(IMPACT TAVI試験)を開始いたしました。下記のごとく研究登録1年半が経過した時点で概ね予定通りのペースで症例登録が進んでおります。今後は、引き続き各施設で症例登録を進めると共に、収集したデータの解析、そして最終的な学術成果発表(学術論文)に向けて努力を重ねてまいります。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本試験について各施設の倫理委員会承認後に、2018年10月より電子入力システムを用いた症例登録を開始しております。現在も症例登録を各施設で継続しておりますが、2018年10月の症例登録開始から現在までの症例登録のペースとしては、概ね当初の予定通りです。東京大学医学部附属病院からも経大腿動脈アプローチでTAVIを施行した47症例を本研究に登録しております。当初の目標である登録開始から3年での目標症例登録に向けて、各施設で症例登録を進めておりますが、参加各施設から約10件の研究計画が提出されており、症例登録と同時進行で参加の各施設から電子入力システムに登録された各種のデータ解析も進めております。一方で、昨今の社会情勢もあり、倫理申請手続きや倫理委員会での承認が遅れたため、多施設での症例登録開始は当初より遅れ、2018年10月となり、未だに症例登録を完遂できておりません。そのため残念ながら現時点では学術成果の発表にも至っておりません。しかしながら、すでに登録された症例についてTAVI治療施行前の臨床データ(臨床背景、血液検査、心エコーデータなど)や治療前後のデータ推移、入院中に発生した合併症データなどを解析しており、概ね当初の研究仮説を実証する結果が得られております。 今後は各施設において現在のペースを維持して、着実に症例登録を進めていくと共に、TAVI術後慢性期の臨床データ(総死亡、心血管死亡、予期せぬ入院など)を収集し、さらなる解析作業を行ってまいります。データ収集に関しては本研究用に開設した電子入力システムを用いて行っており、適宜データをモニターすることでデータの欠損を最小限におさえながら質の高いデータベース構築が可能となっております。予定通り約3年間でデータ登録を完了し、その後はTAVI術後慢性期の臨床データの収集と統計解析作業、そして学術成果の発表を行ってまいります。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策ですが、上記のとおり現時点では目標登録症例数には到達出来ておりません。症例登録開始からは当初の予定通りのペースで症例登録が進んでいるものの今後も引き続き各施設で適切な症例登録を継続していく必要があると考えております。一方で現時点で予定した登録症例の約半数がすでに登録されており、これらの症例については、TAVI手技前のデータや手技に伴う合併症などの情報は解析可能となっております。大きな研究課題の1つであるTAVI治療に伴う合併症の予測に関しては、現時点で収集できたデータですでに統計解析を行っております。TAVI術前に収集した症例データの解析結果とTAVI術後合併症の関連について、概ね仮説を実証する結果となっております。上記以外の研究課題については、TAVI治療後慢性期(5年程度)の臨床データ(死亡、心血管死亡、予期せぬ入院など)が必要となります。上述の通り、多施設での症例登録開始が2018年10月ですので、現時点では最もフォローアップ期間の長い症例でも術後観察期間は2年未満であり、引き続き登録された症例の長期フォローアップデータを、脱落症例を極力減らし、丁寧に収集していく方針です。幸いにも、本研究の実施に際して構築した電子入力システムが有効に機能しており、本研究のようなReal-World Dataで常に問題となる欠損データ・脱落症例が少ない状態で、かつ質の高いデータ収集が現在まで達成されております。今後も電子入力システムに登録された症例のデータを適宜モニターしながら、研究仮説に基づいて解析可能なデータから具体的な統計解析を行い、学術成果としての発表を目指してまいります。具体的な研究計画について、現時点では、参加施設から約10件の研究プロポーザルが提示されており、まずはこれらの研究計画に則り2020年度中の研究成果の発表を目指して研究を進めてまいります。
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Causes of Carryover |
別箇所にも記載の通り、昨今の社会情勢を反映し、各参加施設における倫理申請手続きや倫理委員会承認手続きに当初の予定以上に時間を要しました。このため多施設での症例登録開始が遅れ、2018年10月から本格的な症例登録開始となりました。このような経緯で現時点で、当初の目標症例数には到達しておらず、2020年度も引き続き、多施設での症例登録を継続することとなりました。2020年度の研究継続のために頂戴した研究費を繰り越しして使用させていただくことといたしました。
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