2020 Fiscal Year Annual Research Report
収縮機能の保持された心不全におけるCa2+過負荷の役割と新たな治療方法の開発
Project/Area Number |
19K21305
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
上村 大輔 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (80631340)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 心不全 / 拡張機能障害 / エンパグリフロジン |
Outline of Annual Research Achievements |
ダール食塩感受性ラットに8%高食塩食を投与すると20週齢前後で左室収縮機能が保持されたまま心不全となる。我々はこの拡張期心不全モデルを用いて実験を行ってきた。このモデルにおいて、13週齢(高血圧と左室求心性肥大が確立し、心不全ではない段階)からエンパグリフロジンを投与し、心不全期(20週齢)に回収した。無投薬群との間で、テールカフ法で計測した血圧および脈拍は16週および19週で両群に差はなく、また、14週および18週で計測した摂餌量と尿量から算出した塩分のIn-Out バランスも両群で差を認めなかった。また、回収時に施行した血液検査で血漿中Na濃度やCr濃度も両群で差を認めなった。このような条件下で、回収時に施行した心臓超音波検査では左室求心性リモデリングの指標である相対的壁厚および心室中隔壁厚、および左室後壁厚はエンパグリフロジン群で有意に低値であった。また、解剖時に計測した左室心筋重量係数はエンパグリフロジンで有意に低値であった。一方、カテーテルにより評価した拡張機能指標の中でTauおよび-dP/dtはエンパグリフロジン群で統計学的に有意ではなかったがよい傾向にあった。解剖後の左室における線維化面積は両群で差はなく、左室におけるType 1 CollagenのmRNA量も両群で差を認めなかった。一方BNPの mRNA量はエンパグリフロジン群で有意に低値であった。このように、血圧をはじめ、脈拍やNaバランスなどには両群で差を認めなかったにもかかわらず、左室心筋重量係数や左室におけるBNPのmRNA量はエンパグリフロジンで有意に低値であり、エンパグリフロジンによる直接的な効果である可能性が考えられる。現在、そのメカニズムを解明するため、左室心筋におけるWestern BlottingやPCRを行っている。
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