2018 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトiPS細胞からの中脳オルガノイド作製手法の確立
Project/Area Number |
18H06202
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
七浦 仁紀 奈良県立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (00827909)
|
Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
|
Keywords | 脳オルガノイド / 神経細胞 / ドパミン / 中脳 / パーキンソン病 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト中脳の黒質にはドパミン作動性神経細胞が数多く存在し、これらドパミン作動性神経細胞の喪失によってパーキンソン病が生じることは広く知られている。しかし、パーキンソン病においてドパミン作動性神経細胞が脱落するメカニズムは未解明である。ヒト中脳と類似した構造を持つ臓器様組織(ヒト中脳オルガノイド)を試験管内で作製することが可能となれば、これを用いてパーキンソン病の病因解明や治療法開発を、試験管内で解明することが可能となる。またヒト中脳オルガノイドを作製し、その内部に存在するドパミン作動性神経細胞を移植することで、ヒト由来の脳組織を移植に用いる際に生じる倫理的な問題を回避しつつ、パーキンソン病患者に対する細胞補充療法を行うことが可能となり、再生医療の領域に大きな影響を与えることが期待される。今までに報告されているヒト脳オルガノイド樹立プロトコルの多くは、主に大脳皮質の構造を再現することを目的としており、中脳など脳幹部の構造を再現可能な手法は限られている。そこで本研究は、ドパミン作動性神経細胞を有するヒト中脳オルガノイドを短期間で作製する手法の確立を目的とする。当該年度では、まずヒト多能性幹細胞から、ヒト中脳黒質の細胞と類似した黒色細胞を含むヒト脳オルガノイドを作製した。その後、RT-PCR 法や免疫染色法により、中脳に存在するドパミン作動性神経細胞マーカーの発現を評価した。定量的PCRでは、ドパミン神経細胞マーカーの遺伝子発現の有意な上昇を確認した。また免疫組織学的評価でもドパミン神経細胞マーカーの発現が確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度では当初の計画通り、黒色細胞を含むヒト脳オルガノイドを作製した後、RT-PCR 法や免疫染色法によって、中脳に存在するドパミン作動性神経細胞マーカーの発現を評価した。定量的PCRでは、TH(thyrosin hydroxylase)や、NURR1(Nuclear receptor related 1)などのドパミン神経細胞マーカーの遺伝子発現が有意に上昇していた。また免疫組織学的評価でも同様に、TH やFOXA2(Forkhead box protein A2)などの発現が確認できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヒト脳オルガノイド内部の黒色色素が、霊長類の中脳に存在するneuromelaninであることをFontana-Masson 染色を用いて確認する。また、電気生理学的解析によってドパミン作動性神経細胞に特異的な神経活動の評価を行う。本研究計画が当初の計画通りに進まない場合、ヒト脳オルガノイドから細胞ソート法によって黒色細胞を抽出し、RT-PCR による発現解析を行うことを検討する。またRNA シークエンス法を用いて本法で得られたオルガノイドの遺伝子発現を、ヒト胎児中脳の遺伝子発現プロファイルと比較することも検討する。
|
Research Products
(1 results)