2018 Fiscal Year Annual Research Report
An investigation of molecular mechanisms underlying congenital anomalies by long-read sequencing
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18H06218
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanagawa Children's Medical Center (Clinical Research Institute) |
Principal Investigator |
黒田 友紀子 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター(臨床研究所), 臨床研究所, 医長 (40823589)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | ゲノム構造異常 / ロングリード / 次世代シークエンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
ロングリードシークエンサーは従来のショートリードと比べてゲノム構造異常を検出することに優れている。ロングリードの臨床的有用性を検証するため、既知のゲノム構造異常のシークエンスを最初に行なった。異なる染色体の3カ所に中間部の重複をマイクロアレイ染色体検査で認めた症例についてNanoporeのMinIONで解析を行なった。得られたシークエンスデータは予想を上回り12Gb以上を得ることができたが、ゲノム構造異常を検出するためには十分なカバレッジではなかった。ヒトゲノムが3Gbであることを考慮するとより多くのシークエンスデータ出力が必要と考えられた。MinIONは1回あたりの解析費用は抑えられるが、複数回の解析を重ねるために多くのDNAサンプル量と解析費用が必要になるため本研究に用いるのに適切ではないことが明らかになった。MinIONと同じメカニズムでシークエンスを行え、より多くの出力を有するPromethION(Nanopore)による解析に変更した。PromethIONはMinIONと同じDNA量より5倍以上のシークエンス出力をもちゲノム構造解析に十分なカバレッジを得ることができた。NGMLR, Snifflesの解析ソフトを用いてマッピング、バリアントコールを行いRibbonを用いて閲覧した。解析した検体では、マイクロアレイによりコピー数異常は既知であったが、転座や重複の挿入方向については不明であった。ロングリード解析により3カ所中の2カ所はゲノムの正方向に沿って近接した重複(tandem duplication)であり、1カ所はゲノムの逆方向の重複(inverted duplication)であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既知のゲノム構造異常症例2症例に対して、シークエンスにより切断点を塩基単位で決定することができた。1例目の3カ所重複においての切断点は、tandem duplicationの2カ所では切断を伴わなかったがinverted duplicationでは数塩基の欠失を伴っていた。これまでのFISH検査やサンガーシークエンスでは切断点解析や逆位などの空間的位置関係を正確に同定することが困難であったが、ロングリードにより解明することができた。 2例目の染色体端部欠失では、欠失部位に他の染色体テロメア領域の断片が付加しており、染色体相互転座由来の不均衡転座であることがわかった。両親の染色体に均衡型相互転座は認めず、配偶子形成の過程で起こったものであった。現在転座部位の配列相同性を検討しており、転座が行った機序を検討中である。 2症例の解析を通して、ある程度構造異常が予想されるものでも検出は容易ではないことが明らかになった。MinIONのロングリードシークエンサーは10kb前後のシークエンス長を有し、Mb単位の構造異常では組み替え構造の全長を読むことは不可能であり再構成による予測が必要であった。現時点の解析手法では、未知の構造異常を探索することは困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクロアレイ染色体検査やFISHで検出することが困難である症例についてロングリードシークエンスで解析をすすめる予定である。均衡型相互転座の切断点の同定や、複雑なゲノム構造異常を伴う既知の症候群症例の構造同定を通して発症機序の解明を目指す。均衡型相互転座はコピー数異常を伴わないが切断点周辺の遺伝子発現が変化することが病態と考えられてきた。病態解明に必要な切断点同定は、G分染とFISHなどの従来の技術を組み合わせても困難な症例が多かった。ロングリードは、切断点周辺の繰り返し配列を含めて解析可能であり病態解明につながると考えられる。非典型的な発症機序が予想される既知症候群の症例についてもロングリードによる発症機序解明を行う予定である。発症にはゲノム構造異常が関与していることがFISHにより判明している症例であるが、原因遺伝子周辺に繰り返し配列があり解析困難であった。 今後の解析をすすめるにあたり、データ解析やviewerの改善・工夫が必要である。解析検体にchromothripsisなどの複雑な染色体再構成を合併している可能性があり、ゲノム構造を俯瞰的にみるための取り組みを行う。
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