2018 Fiscal Year Annual Research Report
Rubiconによる心臓オートファジーの制御機構解明と創薬への応用
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18H06227
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
種池 学 大阪大学, キャンパスライフ健康支援センター, 助教 (30609756)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 心不全 / オートファジー |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内分解系であるオートファジーは細胞内恒常性を維持し、細胞保護的な役割を有している。心臓の機能や構造を維持するために、心筋細胞においてもオートファジーが重要な役割を果たしていることが報告されている。本研究ではオートファジー抑制分子であるRubiconを中心とした解析を行うことにより、オートファジーによる心筋細胞内恒常性維持のシステムについての基礎的検討を行い、新しい心不全治療の開発につなげることを目的とした。 ラット新生児から単離した初代培養心筋細胞に薬剤刺激を加えたところ、Rubiconの明らかな発現量の変化を認めなかった。成獣と新生児の違い、もしくは圧負荷と薬剤刺激の違いのため、初代培養心筋細胞では圧負荷条件下の心臓におけるRubiconの発現状態を再現することが難しいと考えられた。 心筋細胞特異的Rubicon欠損マウスはメンデルの法則に従って生まれ、8週齢において心エコー上、明らかな構造的および機能的異常を認めなかった。また、定常状態ではLC3およびp62で評価したオートファジー活性はRubicon欠損マウスと対照群の間で顕著な差はなかった。この結果は、心臓での定常状態におけるオートファジーの制御はRubiconによる影響が小さいことを示唆している。この結果を受け、圧負荷手術を施行したところ、対照群において心肥大のみを呈する時期に、Rubicon欠損マウスは左室の拡大および収縮能の低下を認めた。また肺重量の増加を認め、心不全を呈することが明らかとなった。この心臓サンプルを用いた解析にて炎症や細胞死については両群間に大きな差を認めなかった。さらに、オートファジー活性も明らかな上昇を認めなった。つまり、Rubiconの欠損によりオートファジー活性が上昇し、それが圧負荷誘導性心臓リモデリングに保護的に作用する、という当初の仮説と全く異なる結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
圧負荷病態モデルにおいてオートファジー活性の低下を認めたが、それを初代培養心筋細胞において再現することができなかった。そのため、この手法において、オートファジーへの影響について解析を続けることは難しいと考えられた。一方、心筋細胞特異的Rubicon欠損マウスを用いた圧負荷誘導性心不全病態モデルを作製することに成功し、表現型の解析がほぼ終了した。そのため、現在までの進捗状況としては、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の仮説では、オートファジーの抑制因子であるRubiconを欠損させることによって、心保護的作用を有するオートファジーを活性化させた場合、圧負荷誘導性心臓リモデリングの軽減が見られ、心不全の表現型が改善されると考えていた。しかしながら、心臓特異的Rubicon欠損マウスでは心臓肥大期において心不全の表現型を示した。またオートファジー活性には明らかな違いを認めなかった。これらのことから、Rubiconがオートファジーとは異なるメカニズムで心臓保護作用を有する可能性があることが示唆された。これは仮説と全く異なる逆方向の表現型であり、これまでRubiconで報告されてきたオートファジーを基本とする病態の解明ができないため、全く新たなメカニズムを解明することを目指す。
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