2018 Fiscal Year Annual Research Report
ニューロメジンBはクッシング病の新規治療薬となるか
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18H06229
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
亀田 啓 北海道大学, 大学病院, 助教 (20826127)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | クッシング病 / 新規治療薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではニューロメジンB(NMB)受容体拮抗薬のクッシング病(ヒト下垂体ACTH産生腺腫)への治療薬としての可能性を追求するとともに、その作用機序を検討することを目的として実験を行っている。クッシング病は外科的下垂体腺腫摘除が第一選択として行われるが、寛解率は高くなく、有効な治療薬が望まれている。 平成30年度は細胞を用いた実験を主に行い、ニューロメジンB受容体拮抗薬であるPD168368がマウス下垂体癌由来のAtT-20細胞でCREBとERK1/2のリン酸化を抑制し、下流に存在する転写因子であるcFosやNur77の発現を抑制することで、最終的にPOMC遺伝子の発現を低下させ、ACTH分泌を抑制することを発見した。以上から我々はNMB受容体拮抗薬PD168368が細胞内でどのような経路に作用してACTH分泌を抑制するかを明らかにした。ホルモン分泌だけでなく、細胞増殖に関わる細胞周期関連蛋白の発現量、リン酸化の程度についても今後検討を進めていく予定である。 動物実験についてはクッシング病のモデルマウスであるCorti-EGFR-Tgマウスを米国Cedars-Sinai Medical Centerより移送し、研究に使用する体制を整えることができた。計画通り次年度から薬物投与実験を開始できるよう準備を進めている。疾患モデルマウスへの薬剤投与実験により、薬剤の効果や副作用について生体で検討することで、臨床応用に向けて重要な知見が得られると考えられる。 ヒト下垂体腺腫の検討は臨床研究計画書を作成している段階であり、来年度に計画の申請・許可を受け研究を進める予定である。手術により摘出されたヒト下垂体腺腫細胞にNMB受容体拮抗薬を投与することでヒトの下垂体腺腫細胞に対する効果を確認することができ、マウスの実験で得られた結果がヒトに応用可能かどうかを評価することができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞実験については計画通りNMB受容体拮抗薬を投与した際の細胞内のPomcならびにその転写に関与する転写因子や細胞周期に関与する遺伝子・蛋白の発現をリアルタイムPCR法やウェスタンブロット法で評価した。NMB受容体拮抗薬PD168368はCREBとERK1/2のリン酸化を抑制し、下流に存在する転写因子であるcFosやNur77の発現を抑制することで、最終的にPOMC遺伝子の発現を低下させ、ACTH分泌を抑制することを発見した。細胞周期関連蛋白の解析については現在検討中である。 マウス実験については遺伝子組み換えマウスの輸送に関する法的な手続きを進め、米国 Cedars-Sinai Medical CenterからCorti-EGFR-Tgマウスを我々の研究施設に輸送した。今後実験に必要な数を得るために交配し、平成31年度中に薬物投与実験を開始する予定である。 ヒト下垂体腺腫検体を用いた薬剤投与実験については研究計画書を作成中であり、平成31年度に承認を受け研究を開始する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞実験については平成30年度に得られたホルモン産生に関わる因子に加え細胞周期関連蛋白の検討を進め、NMB受容体拮抗薬のACTH産生腺腫細胞の増殖抑制作用の機序を明らかとする。 マウス実験については交配により実験に必要な匹数を確保したのち、NMB受容体拮抗薬PD168368の投与実験を行う。 ヒト下垂体腺腫細胞を用いる研究については研究計画書の承認を受けたのち、下垂体腺腫の患者から同意を得た上で下垂体腺腫検体に対する薬物投与実験を開始し、結果を内分泌検査の結果と関連を調べる。
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