2018 Fiscal Year Annual Research Report
小児急性骨髄性白血病における網羅的変異解析とプレシジョンメディスンへの応用
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18H06234
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Gunma Institute of Public Health and Environmental Sciences |
Principal Investigator |
大和 玄季 群馬県衛生環境研究所, 研究企画係, 研究員 (90825720)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 急性骨髄性白血病 / 小児 / プレシジョンメディスン / 変異解析 / クリニカルシーケンス |
Outline of Annual Research Achievements |
小児急性骨髄性白血病(AML)は分子生物学的異常と治療反応に基づいたリスク層別化治療により、長期生存率は60-70%まで向上した。近年、次世代シークエンサーの登場によって、がん領域におけるクリニカルシーケンスが米国を中心に急速に普及している。治療決定に必要不可欠とされるクリニカルシーケンスは、研究論文で構築されたデータを基盤としており、小児AMLにおいても腫瘍の原因遺伝子となる、より多くのゲノム情報が必要とされている。 申請者は、これまで本邦で行われたAML99 研究及び日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)AML-05 研究の検体を用い、RUNX1 遺伝子変異が予後不良であり、第一寛解における造血幹細胞移植の必要性を報告してきた。今回、クリニカルシーケンスによるプレシジョンメディスンの根拠となるべく、小児AML において予後因子が同定できない正常核型や複雑核型症例を中心に343 遺伝子のパネルシーケンス計画した。 2018年度の研究では正常核型、複雑核型を中心とした小児AML約100症例に対してパネルシーケンスを行い、多数の遺伝子変異を複数の症例で同定している。同定された遺伝子変異について、これまでの遺伝子解析ツールを使用して有意な遺伝子変異のみを抽出し、臨床データとの比較検討を行った。現在予後不良因子となりうる可能性のある遺伝子変異を同定し、過去の報告に関しての検討も行っている。これらの結果に関する一部について、昨年度の米国血液学会で発表を行っている。また、本年度の学会で報告をするべく、準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
正常核型、複雑核型を中心とした小児急性骨髄性白血病約100例を対象にして次世代シーケンサーを使用した343遺伝子パネルシーケンスを行い、多数の遺伝子変異を同定している。現在は同定された遺伝子変異について、これまでの遺伝子解析ツールを使用して有意な遺伝子変異の絞り込みを行い、臨床データとの比較検討を行っているところである。一部データがまとまったものに関しては昨年度の米国血液学会で報告もできており、研究進捗状況としては順調に進展していると考えられる。現在は絞り込まれた遺伝子変異の中から、予後不良因子となりうる可能性のある遺伝子変異を同定し、既存の報告があるかの検討、および過去の報告があるものに関してはその傾向の比較検討を行っている。本年度は対象症例を更に増やしてパネルシーケンスを行い、小児急性骨髄性白血病における各遺伝子変異のより詳細な頻度や臨床データとの相関関係を解析する予定である。また、これまでのまとまったデータおよび今後解析予定のデータに関して、本年度の各学会(日本血液学会や日本小児血液がん学会、および米国血液学会を目標としている)で報告をするべく、準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在パネルシーケンスにてこれまで得られた遺伝子変異データから臨床データとの比較検討を行っているところである。予後不良因子となりうる可能性のある遺伝子変異の候補選定を行っているが、本年度は対象症例を更に増やしてパネルシーケンスを行う予定であり、これらの新規のデータを追加した上で、より予後に関連した遺伝子変異の絞り込みを行う。これまでの解析で小児急性骨髄性白血病においてリカレントな遺伝子変異を複数同定できており、研究計画としては現在の方針のままで問題ないと思われる。 本年度計画しているパネルシーケンスに加えて、今後は統計解析をメインに行い、各遺伝子変異の頻度に加えて性別や年齢、白血球数といった臨床データとの比較、これまでに得られた他の染色体異常や融合遺伝子、遺伝子変異や構造異常、遺伝子発現との相関関係、再発率、生存率との関係について解析していく。
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