2018 Fiscal Year Annual Research Report
ポータブル心臓灌流装置を用いた心停止ドナーからの心臓移植の臨床応用
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18H06241
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
末澤 孝徳 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (60828276)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 心臓移植 / マージナールドナー |
Outline of Annual Research Achievements |
心臓移植は、重症心不全に対する最終的な治療として世界的にその重要性が唱えられており、近年、移植医療のさらなる発展が見られている。一方、現在、日本での最大の問題点はドナー不足であり、移植待機中に亡くなられる患者や海外渡航による移植が後を断たない。心移植のドナープールを増やすために、現在、心停止後ドナー心の活用が世界中で模索されているが臨床応用はまだ散発しているのみであり、その問題としてマージナルドナーである心停止ドナーの心臓が移植に耐えうるか判断が困難であることがあげられる。心停止後ドナー心の移植用グラフトとしての有効性を証明するには、移植前に体外で心機能を評価する必要があり、負荷非依存性の心機能測定法の確立が必要である。 我々は、以前よりブタ心停止後ドナーモデルを作成し、その心機能評価に取り組んでおり、これまでの研究の中で、体外での心機能を評価する方法について種々の検討を行ってきた。本年度の検討では、まず心停止ドナーの問題の一つである心筋細胞の過伸展に注目した。心筋細胞に伸展負荷刺激を加えた際に発現する遺伝子 としてc-fos mRNAが知られている。c-fosは、伸展負荷後5分と非常に早くから発現を認め、その発現レベルは伸展の強度に依存していることから心室容量負荷の程度を定量化する指標となる。この研究の結果として、心停止後ドナー心では左室心筋に対して右室心筋は7倍以上のc-fos発現が認められた。すなわち、虚血心停止時には左室と比較して右室に対しより大きな容量負荷がかかっていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的である、ポータブル還流装置を用いた心臓の蘇生、還流は可能となり、また心機能低下の原因とされる心筋の過伸展について示唆されている。今後は、ポータブル還流装置で心機能評価を行うことで、移植に耐えうるかどうかの判断が可能となるか検討する予定である。前述のとおりすでにポータブル還流装置による心臓の還流は可能となっており、今後の研究を円滑に行えると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ポータブル還流装置を用いて、移植前の心機能評価が可能であるか検討を行う予定である。ポータブル還流装置では、生体と違い心臓に対する前負荷および後負荷がなく、装置内でいかに生体内の環境を作成するかが重要となる。これらは人工心肺に使用する血液ポンプや人工肺および貯血槽を組み合わせて行くが、心臓生理に関する知識を必要とする。最終的には、ポータブル還流装置内で評価した心臓を、実際に移植して再度心機能を測定することにより、ポータブル装置内での心機能評価の信頼性を探ることができ、ひいては臨床応用可能かどうかの判断となる。
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