2018 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣癌化学療法における腫瘍細胞のホスファチジルセリン露出を介した免疫逃避機構
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18H06254
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
河野 まひる 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (30822209)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 化学療法 / アポトーシス / マクロファージ / ホスファチジルセリン |
Outline of Annual Research Achievements |
卵巣癌細胞株(SKOV3,HeyA8,ID8)を用いて、シスプラチン感受性をMTSアッセイにて検討した。そしてシスプラチン100μM投与後72時間で半数以上の細胞死が誘導できる結果を得たため、以降この条件を用いた。Annexin VはPS に結合することを利用して、卵巣癌細胞株をシスプラチン100μMに暴露した後、蛍光標識したAnnexin V とPIを添加し、Flow cytometry法で癌細胞のPS露出の程度を評価した。昨年度は、細胞株にシスプラチン100μM添加後、3時間から36時間の間で至適評価時間を検討する予備実験を行った。 (2) 卵巣癌においてPS露出を担う分子の同定 今後のXkr発現解析に備え、当研究室で維持している細胞株についてRNAを抽出するとともに、Real time PCRについて条件検討の予備実験を行った。これに並行して、ヒト卵巣癌組織のRNA抽出を行った。パラフィン包埋ブロックを薄切しHE染色のうえ、レーザーマイクロダイセクションにて、腫瘍成分のみを回収した。しかし得られる腫瘍組織が少なく、RNA収量がわずかである問題があり、条件検討を重ねている。 (3)卵巣癌モデルマウスの樹立 卵巣癌細胞株ID8 5x106個をC57BL/6マウス皮下に移植し、卵巣癌モデルマウス作成を試みた。しかし、生着率が悪く、腫瘍発育が緩徐であったため、シスプラチン投与実験が行えなかった。移植する細胞数の検討、腹膜播種モデルへの変更を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抗癌剤投与後の卵巣癌細胞株をフローサイトメトリー法で検討する系で、条件検討に時間を要し、当初の計画通りに運ばなかった。そのため、同時進行して他の検討項目を先に行うなど、計画を変更する必要が生じた。今後は以下のようにして研究を推進させる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)卵巣癌におけるPS露出の検討 昨年度の検討を継続し、シスプラチン暴露後に、PS露出が明らかな細胞株を選定する。アポトーシスに際しスクランブラーゼ活性を示すXkr4,8,9の発現の有無をReal time-PCR法で検証し、卵巣癌のアポトーシス時にPS露出を担う分子を同定する。また、ヒト卵巣癌のパラフィン包埋組織より抽出したRNAを用いて上記と同様にXkr4,8,9の発現の有無をReal time-PCR法で検証する。 (2)Xkrノックアウト細胞株の樹立 マウス卵巣癌細胞株ID8について、研究(1)により同定された分子をCRISPR/Cas9システムを用いてノックアウトする。目的の遺伝子編集が確認できたクローンについて、研究(1)と同様法でPS露出が阻害されることを確認する。そして培養実験系での細胞増殖能、シスプラチン感受性が親株と同等であることを確認する。さらに樹立した細胞株をシスプラチン暴露後にマクロファージに貪食させ、親株を餌として用いた場合に比べ貪食が遅れるか検討する。 (3)マウスモデルでの検討 卵巣癌細胞株ID8を皮下移植し、マウスモデルを作成する。シスプラチン投与実験にて、親株と(2)のXkrノックアウト細胞株の腫瘍体積、転移の有無、生存期間を比較検討する。また、腫瘍組織を病理学的に検討する。
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