2018 Fiscal Year Annual Research Report
口腔がん悪性化におけるRNA編集酵素ADAR1の意義解明
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18H06269
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坂田 健一郎 北海道大学, 大学病院, 医員 (10826051)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 口腔扁平上皮がん / RNA編集 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔扁平上皮がん(口腔がん)は、進行した病態で発見されることが多く、進展症例に対する分子標的薬もEGFR阻害剤があるだけで、新たな薬の開発が望まれている。RNA編集酵素ADAR1はRNAに変異を挿入する酵素であり、発現量に依存して、タンパク質変異体を作り出す。申請者は、頭頸部がんでADAR1が高発現し、RNA編集頻度が高いと生存率は低下するという報告から、口腔がんとADAR1の関係性に着目した。 本研究では、口腔がん組織におけるADAR1タンパク質の発現を調べる。次に、口腔がん細胞におけるADAR1の基質RNAを分離し、腫瘍悪性化に関わるRNAを、In vitro アッセイにより同定する。同定した野生型、及びRNA編集型タンパク質の口腔がん組織における発現を調べることで、口腔がん悪性化にRNA編集酵素ADAR1が関与するという仮説を立証する。口腔は他の臓器と比べ、熱、アルコール、炎症といったストレスに頻繁に晒される。ADAR1は炎症刺激により発現が誘導されることから、「口腔がんではRNA編集が増加し、腫瘍の悪性化を引き起こす」と考えた。本研究の学位術的背景としてADAR1は頭頸部がんにおいて高発現し(Han Lら, Cancer Cell, 2015)、RNA編集頻度が高いと生存率は低下する(Paz-Yaacov Nら, Cell Rep, 2015)。またRNA編集は、頭頸部がんのうちHPV陰性のグループで高くなっている。これらの報告は、口腔扁平上皮がん(口腔がん)におけるADAR1の重要性を示唆しているが、口腔がんにおけるADAR1の腫瘍生物学的意義はいまだ不明である。そこで本研究では、1)口腔がん組織におけるADAR1の免疫染色、2)ADAR1欠損細胞株の樹立、3)口腔がん細胞株におけるADAR1基質RNAの同定、4)In vitro アッセイを用いた悪性化関連RNA編集の同定、5)口腔がん組織における野生型、及びRNA編集型タンパク質の発現を解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究は申請者自身が1人で行う。次世代シーケンスは、及び1アミノ酸変異を認識する抗体の作製は、外注予定である。現在、ADAR1の免疫染色・ADAR1欠損株樹立・ADAR1基質RNAの同定を行っている。今後は悪性化関連RNA編集の同定・野生型,RNA編集型タンパク質の発現を解析施行後に、論文投稿を行う。関連する口腔癌の基礎研究として、Second AuthorとしてBiomedical Researchに論文が受理された。また、口腔癌の臨床統計報告を共同演者として口腔腫瘍学会で発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の基礎dataの蓄積後に、臨床サンプルでの解析を行いたい。倫理委員会での承認後になるが、本学付属病院における臨床研究として有益なデータとなることが期待される。
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