2019 Fiscal Year Annual Research Report
iPS細胞の細胞内レドックス制御を基盤とした新規骨再生法の開発
Project/Area Number |
19K21362
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 隼 東北大学, 大学病院, 医員 (30822241)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 人工多能性幹細胞 / 酸化ストレス / 骨芽細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、細胞内レドックス制御によるiPS細胞の骨芽細胞分化誘導技術を開発することである。 まず、細胞膜透過性小分子抗酸化物質であるNアセチルシステイン(NAC)添加が骨芽細胞分化誘導におけるマウスiPS細胞のレドックスステータスに及ぼす影響の検討を行った。細胞内抗酸化物質であるグルタチオン量はNAC添加群(実験群)においてNAC濃度依存的に増加した。次に、酸化ストレスの指標として過酸化水素量を発光アッセイにて測定した。骨芽細胞分化誘導初期(5日目)、後期(21日目)ともに対照群と比較して、実験群において単位DNA量あたりの過酸化水素量は有意に減少した。 次に、iPS細胞の酸化ストレスの抑制が骨芽細胞分化に及ぼす影響をAlizarin red S染色、比色カルシウム定量法およびRT-PCR法にて評価した。実験群では対照群と比較し経時的(骨芽細胞分化誘導14日後、28日後)にAlizarin Red陽性領域の有意な増加をみとめた。次に、比色カルシウム定量を用い骨芽細胞分化誘導28日目のカルシウム量の評価を行った。実験群において有意カルシウム量の増加を認め、iPS細胞の石灰化が促進している可能性が示唆された。また、リアルタイムRT-PC解析により、実験群では骨芽細胞分化誘導8日目において骨芽細胞分化マーカーであるBglap発現の有意な増加を認めた。また、骨芽細胞分化に重要な役割があるWntシグナルおよびBMPシグナルの関連遺伝子の発現の増加も認めた。さらに興味深いことに、実験群においてナトリウム依存性リン酸トランスポーターであるPit1およびPit2の遺伝子発現の増加をみとめたことから、NACが細胞内へのリン酸の流入を促進することで、石灰化を促進している可能性が予想された。本研究成果により、酸化ストレスの抑制がiPS細胞の骨芽細胞分化を促進している可能性が示唆された。
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