2018 Fiscal Year Annual Research Report
UVA活性リボフラビン架橋法による根面う蝕の再石灰化治療法の開発
Project/Area Number |
18H06291
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上村 怜央 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (10823560)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 象牙質 / 再石灰化 / コラーゲン / う蝕モデル / 架橋結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、高齢者の根面う蝕の増加が問題となっており、この根面う蝕の予防および進行抑制が重要な歯科臨床課題であると考えられる。我々は、これまでに光増感剤であるリボフラビン(ビタミンB2)と紫外線の併用(UVA活性リボフラビン架橋法)により、歯の象牙質のコラーゲン分子間および分子内架橋の形成を促進し、ミネラルの流出を防ぐことによって、根面象牙質の脱灰を抑制することを発見した。そこで本研究では、すでに進行した活動性根面う蝕を想定した脱灰病変モデルを使用し、その脱灰した象牙質試料にUVA活性リボフラビン架橋法を適用することによって、象牙質コラーゲンの強化により失われた無機質をより再石灰化させるという、現在の歯科臨床において新たな根面う蝕抑制法を開発し、歯を削らないう蝕治療を実現することを目的とした。 まず、活動性根面う蝕を想定した象牙質試料の作成にあたり、ヒト抜去大臼歯の歯根から象牙質試料を採取し、試験面以外をワックスにて被覆したのち、脱灰溶液(酢酸、CaCl2、KH2PO4、pH5.0)に3日間浸漬し、脱灰病変モデルとした。試料の脱灰面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、表層から無機質が失われていることを確認した。その後、UVA活性リボフラビン架橋法を実施するにあたり、象牙質の強化に最適な条件であった0.1%リボフラビン溶液浸漬後、照射強度1600mW/cm2の紫外線を10分間照射した。そして試料を再石灰化溶液(pH7.0)に8日間浸漬させ、処理の有無による違いをSEMにて観察し、コラーゲンの強化によりコントロールと比べて石灰化物の析出が検出され、脱灰されて露出した象牙質コラーゲンが明らかに石灰化されていることが示された。象牙細管の開口度も明らかに異なり、再石灰化が促進されることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
UVA活性リボフラビン処理によって、健全象牙質面の脱灰抑制だけでなく、象牙質の再石灰化にも寄与する可能性が判明した。また、象牙細管の開口も異なる様式を示しており、UVA活性リボフラビン処理によりコラーゲン分子間架橋の形成促進に伴い、石灰化物沈着の足場となり得ることがわかり、象牙質の明らかな微細構造の変化が示され、当初の実験計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
象牙細管の形態の変化によるミネラル密度の差異をマイクロCT撮影により検討する。また、析出した石灰化物について、EPMAによる元素分析を実施して、カルシウム元素の分布を測定する。表面硬さの変化についても、ナノインデンテーションにて評価を行う。
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Research Products
(1 results)