2018 Fiscal Year Annual Research Report
リプログラミング技術を用いた口腔扁平上皮癌幹細胞の特性分子探索
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18H06299
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
平島 寛司 日本歯科大学, 生命歯学部, 助教 (50824661)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | 癌幹細胞 / リプログラミング / 口腔扁平上皮癌 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
癌幹細胞は組織幹細胞と性状の似た細胞であり、癌の根治には癌幹細胞の撲滅が不可欠である。本研究では口腔扁平上皮癌(OSCC)の癌幹細胞を標的とした治療の実現に向け、iPS 細胞作製に用いるリプログラミング技術によってOSCC 細胞の分化段階を巻き戻し、細胞の特性分子による選別によって、人工的に癌幹細胞様の細胞 (人工癌幹細胞) の作出を行っている。この“人工癌幹細胞”ともいうべき、未分化・癌幹細胞マーカー分子の発現上昇を認めるOSCC 細胞由来の細胞集団の遺伝子発現パターンや細胞膜電位等を解析し、“本物の”癌幹細胞の特性分子を明らかにすることが、本研究の目的とするところである。現在までに、申請者らが確立した方法[1]をもとに、3種類の口腔癌細胞株であるCa-9-22 (歯肉癌) 株・HSC-3-M3 (舌癌)株・KON (口底癌) 株に対してリプログラミングを行い、未分化状態に戻された細胞を選別する際に有効と考えられる分子の選定を行った。その結果、口腔癌細胞株では、リプログラミング大腸癌細胞のような多能性幹細胞様のコロニー形成は認められなかったものの、リプログラミング直後にCD90/Thy-1およびCD24の一過性発現上昇がみられることが明らかになった。【参考文献】[1] Hirashima K. et al.「Cell biological profiling of reprogrammed cancer stem cell-like colon cancer cells maintained in culture」Cell Tissue Res. 2019 Mar;375(3):697-707. doi: 10.1007/s00441-018-2933-8. Epub 2018 Oct 3.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに、申請者らが大腸癌細胞に関して報告した手法をもとに、3種類の口腔癌細胞株であるCa-9-22 (歯肉癌) 株・HSC-3-M3 (舌癌)株・KON (口底癌) 株に対してリプログラミングを行い、未分化状態に戻された細胞を選別する際に有効と考えられる分子の選定を行った。結果、腺癌の大腸癌細胞株と重層扁平上皮癌の口腔癌細胞株では、リプログラミングに対する応答性が異なったものの、いずれもTra-1-60陽性細胞を分取することで、未分化・幹細胞マーカーを高発現する細胞集団を得ることができた。また、これらの細胞の継続培養が行えるよう環境の整備を行った。 次に、これら3種のリプログラミング口腔癌細胞株から発現上昇を認める癌幹細胞マーカー分子の探索を行った。その結果、3種の口腔癌細胞株はいずれもリプログラミング直後にCD90/Thy-1およびCD24の発現上昇を認め、培養を継続する過程で発現は徐々に低下していくことが明らかになった。これらの結果を踏まえ、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はCD90/Thy-1およびCD24の発現上昇を認める細胞集団の単離・抽出を、セルソーター (FACS) や磁気細胞分離装置 (MACS) を用いて行う予定であり、この細胞集団を用いて、CD90/Thy-1およびCD24が“癌幹細胞らしさ”の指標となる分子であるかを評価すべく、薬剤耐性能や免疫不全動物を用いた腫瘍形成能の評価を行う予定である。細胞形態 (SphereおよびES/iPS 細胞様コロニー形成)の評価、Real time-PCRや蛍光免疫染色による各種癌幹細胞・未分化マーカーの発現解析を並行して行う過程において、既に癌幹細胞様の細胞集団の単離に成功した大腸癌や膵臓癌細胞株との細胞性状の変化について比較を行い、リプログラミングによって分化段階を巻き戻した癌細胞から、人工癌幹細胞を抽出する手法が通用するか、別種の癌細胞株を用いた検討も行う予定である。 さらに、薬剤耐性能を持つ細胞のATP依存性薬剤排泄トランスポーター分子の発現や、膜電位感受性色素 (VSD) による光計測法による細胞膜電位変化の解析薬剤耐性能獲得機序の解明を進める。事業期間終了後においても、リプログラミング細胞集団中にみられる薬剤耐性能を持つ細胞集団を、免疫不全動物に移植することで腫瘍形成能の評価や、形成された腫瘍の病理学的評価、in vitroでの分化誘導試験による腫瘍組織形成過程の再現を試み、最終的にはOSCC幹細胞に対する治療標的分子を明らかにしたいと考えている。
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