2018 Fiscal Year Annual Research Report
BRD4、EGFR発現口腔がんにおけるmiR-3140の治療応用性の検討
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18H06322
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
外内 えり奈 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (50826831)
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Project Period (FY) |
2018-08-24 – 2020-03-31
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Keywords | microRNA / 口腔がん / EGFR |
Outline of Annual Research Achievements |
microRNA(miRNA)は、それ自身はタンパク質をコードしていない、短いノンコーディングRNAであり、1つのmiRNAは複数の遺伝子を多面的に抑制する機能を有する。これまでの研究で、miR-3140はがん遺伝子の転写を亢進させるBRD4や、がん細胞増殖因子であるEGFRを標的遺伝子としてがん細胞増殖抑制効果をもたらすことを膵臓がん細胞株において示した背景があり、本研究では口腔がんへの応用性の評価を目的としている。口腔がんにおいては、EGFRをターゲットとするキメラ抗体が臨床で適応となっており、一定の延命効果を示している。実際に口腔がん臨床検体においてはEGFRの増幅を有していることが報告されている。そこで、口腔がん細胞株の遺伝的背景を評価し、EGFRの増幅の有無でmiR-3140の腫瘍抑制効果に差を生じるかについて評価することとした。口腔がん細胞株から抽出したサンプルで次世代シークエンサーを用いた解析を行い、EGFR増幅の有無で大別した。その中で、EGFR増幅を有しEGFRタンパク質発現も高い細胞株としてHSC2、EGFR増幅なくタンパク質発現も低い細胞株としてHOC313を使用することとした。今後miR-3140をそれぞれの細胞株に導入し、細胞増殖抑制能の評価を行う予定であるが、現在は予備実験として条件検討を行っている。 また、miR-3140の主要なターゲットとしてBRD4があるが、cBioPortal等の公共データベースを検索すると、口腔がんにおいてはBRD4の遺伝子変異や増幅などを有する症例の割合は非常に低く、予後との関連性も明らかではないようだ。しかし、口腔がん細胞におけるBRD4の機能解析は十分な報告がないことから、今後機能解析を行う必要があると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
限られた条件の中で、効率のよい実験計画を立案するべく、公共データベースから得られる情報を有意義に活用できるように探索している。本研究を行うにあたり、実験器材の購入や環境整備が必要であり、時間を要した。現在までにがん細胞培養実験の環境を整え、扱う口腔がん細胞株の選定を行い、予備実験を行っている。まずは口腔がん細胞株にmiR-3140を導入した際の効果を評価する予定で研究を進めていく方針である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、より重要な遺伝子を複合的に抑制できるmiRNAを応用することを目的としている。これまでの研究で、miR-3140はBRD4やEGFRを抑制することを機能としていることを示してきた。まずは、既知の口腔がん治療薬のターゲットであるEGFRに着目し、EGFR発現の高い口腔がん細胞株HSC2、EGFR発現低いHOC313にmiR-3140を導入することで、細胞増殖抑制能やEGFRタンパク発現量に与える挙動の違いを評価する。これにより、EGFR経路への依存度によりmiR-3140の抗腫瘍効果に差を生じるかを検討し、臨床でmiR-3140を使用する際にEGFRがマーカーとして有用かどうかを評価する。さらに、miR-3140はEGFRの3’UTR領域に結合して発現そのものを低下させるため、抗EGFR抗体の使用で発生するATP binding pocket部の変異により、治療抵抗性を示すがんに対しても、効果が見込める。既存の分子標的治療薬に抵抗性をもつがん細胞にmiR-3140を導入し、抗腫瘍効果を評価することで、現在治療標的であるEGFR経路に対しても、miRNAを用いた新たな治療法の確立を試みる。また、miR-3140の重要なターゲット遺伝子としてBRD4があるが、BRD4は乳がんなど他のがん種で分子標的薬の治療標的として有用な可能性が示唆され、研究が進んでいるが、過去の文献からも口腔がんでの検討が十分ではない。口腔がん細胞株のBRD4発現量を評価し、口腔がん細胞においても治療標的となりうる遺伝子であるかを検討する方針である。その後は口腔がん臨床検体でのmiR-3140、EGFR、BRD4の発現状況を評価し、miR-3140投与での治療戦略の可能性を評価予定である。
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